商品を売るのではなくて「ライフスタイル」を売る

「業態論」よりも「個態論」の時代が来る

オーバーストア、ネット販売との競争が激化し、「レッドオーシャン(同質競争)」の戦いによる消耗戦が続いている。これからの小売業が、競争相手と完全に差別化し、「ブルーオーシャン」「オンリーワン」の存在になるためには、小売業としての「ブランド」を確立する必要がある。ブランドを確立するためには、わが店でしか提供できないオンリーワンの付加価値を創造しなければならない。
 唯一無二の「ブランディング」のためには、SB(ストアブランド)、PB(プライベートブランド)のようなオリジナル商品を開発することは当然の経営戦略である。
 しかし、かつてのSBのように、パッケージデザインは有名NB(ナショナルブランド)のパクリで、価格だけが半値といったプライスブランドでは真の差別化は実現できない。これからの商品開発は、その小売業だけの「ブランドの世界観」、NBを超える「カッコよさ」を確立し、安さ以外の付加価値を創造しなければならない。
 そういう意味で、今月号で紹介した「カインズ」は、小売業としてのブランディングに関して他社を大きくリードしている(4ページからの特集参照)。カインズは、SB、PBの売上構成比が40%を超えており、売場はカインズでしか買えないオリジナル商品による生活提案に満ち溢れている。
 「バッタモン的PB」と違って、カインズのPBのデザインはとても洗練されおり、専門のデザイナーがブランドの世界観をつくっている。比較して申し訳ないが、「保存ラップ」売場のカインズのPBと、NBメーカーのパッケージデザインを比較すると、どう見てもNBメーカーの保存ラップのパッケージの方がダサい(写真1参照)。

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 理由は、NBメーカーのパッケージデザインは、「商品を保存する」「安全に温める」という機能やライフスタイルを提案するのではなくて、「○○ラップ」という商品名の訴求がすべてという固定観念に凝り固まっているからである。
 カインズの固定客は、カインズというブランドに対する熱狂的な信者である。「儲ける」という言葉は、「信」+「者」に分解することができる。まさに、「カインズじゃなきゃダメ」という熱狂的な信者(固定客)を増やし、企業と店のブランドを確立していることが分かる。ブランディングこそが、これからの小売業が儲けるために挑戦しなければならない、最優先の経営戦略である。
 カインズの土屋裕雅社長によれば、「次世代型ホームセンター」と位置づける店名からは「ホームセンター」という言葉をあえて削除し、「CAINS」というロゴだけのCIデザインにしたそうだ。
 つまり、ホームセンターやドラッグストアという業態が同じであれば、売場は同質化していた「業態論」の時代が終焉し、その企業、その店のオリジナリティ(独自性)を追求していく「個態論」の時代が到来したことを意味している。カインズは、ホームセンターという業態ではなくて、「CAINS」というオンリーワン(唯一無二)の「個態」なのである。

ささやかな暮らしの楽しさを提案する

 小売業がブランディングしていくために重要なことは、…
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