変化対応できなかった
トイザらスの経営破たん
アメリカの「トイザらス」が連邦破産法11条(日本でいう民事再生法)を申請したというニュースは衝撃的であった。トイザらスは、玩具の「カテゴリーキラー」として、一世を風靡した業態である。
ワンストップショッピング性を追求する「総合業態」に対して、カテゴリー単位でシェアを奪うカテゴリーキラーは、1980年代に登場した当時は、極めて革新的な業態であった。
カテゴリーキラーの最大の革新は、倉庫型の店舗によるローコストオペレーションだった。カテゴリーキラーという業態は、カリフォルニア州サンディエゴの「プライスクラブ(コストコの前身)」のオペレーションが原点であった。
プライスクラブは、飛行機の格納庫を改造してつくった倉庫型の店舗で、バックヤード在庫は持たず、ラック式の什器の上の部分を倉庫として活用し、パレット単位でメーカーから店舗に直送し、フォークリフトを使って格納、陳列するという究極のローコストオペレーションを導入した。
トイザらスやホームデポのような1980年代に急成長したカテゴリーキラーは、MWC(会員制現金卸売倉庫)であるプライスクラブのローコストオペレーションを採用し、従来の専門店よりも販管費率を大幅に下げた。そして、粗利益率が高止まりしていた従来の玩具店やHC(ホームセンター)よりも低い粗利益率に設定し、業界常識を破る「価格破壊」によって、一挙に市場シェアを奪った。
さらに、カテゴリーキラーは従来の専門店の2倍以上の売場面積のスーパーストア化(大型専門店化)を進めて、品揃えの豊富さで既存勢力を圧倒した。つまり、カテゴリーキラーは、「低価格」と「品揃えの豊富さ」という2つの革新によって、旧来型の専門店を駆逐し、Kマートのような総合業態からもシェアを奪っていった。
ところが近年は、アマゾンのようなネット販売にシェアを奪われて、この5年間は売上高を減らし続けていた。アマゾンの2016年の玩具の売上高は40億ドルを超えている。その売上はトイザらスの売上高の3分の1を優に超えている。
かつて、「低価格」と「品揃えの豊富さ」によって旧来型の専門店からシェアを奪ったトイザらスは、同じ2つの原因でアマゾンにシェアを奪われたわけだ。
実店舗を持たないアマゾンは、倉庫のロボット化などによってオペレーションコストを徹底的に引き下げて、トイザらスを凌駕する「安さ」でシェアを奪った。また、アマゾンはリアル店舗をはるかに超える「品揃えの豊富さ(ロングテール)」を実現し、トイザらスの大型店舗の「品揃えの豊富さ」の魅力を無力化した。
トイザらスは近年、ネット販売を強化したが、同社のECサイトは使いにくく、アマゾンに対抗することはできなかった。結局、トイザらスは、時代の変化に対応するイノベーション(革新)を起こすことができず、消費者に選ばれない店になってしまったわけだ。
顧客第一主義に投資した
ホームデポは生き延びた
時代を超えて生き残るためには、急成長期のイノベーションや成功体験にとどまらず、常に挑戦し、変化対応できることが不可欠であることを、トイザらスの経営破たんは示唆している。
同じカテゴリーキラーでありながら、「ホームデポ」は現在も成長を継続している。ホームデポの過去6年間の財務データを図表1にまとめた。店舗数は横ばいなのに、売上を3割も増加させていることが大きな特徴である。
ホームデポの革新の第1は、…
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