「8つの大変化」に対応できないと どんな大企業も生き残れない!

人口減少時代に突入
生産性革命は待ったな

 これからの10年間は、1960年代に大成長したチェーンストアの成功体験が通用しない異次元の大変化時代が到来する。その大変化を8つの重点経営課題に整理してみよう(図表1)。
 図表1第1の重点課題は、「リアル店舗の価値づくり」である。ネットで何でも購入できる時代において、小売・流通業に関わる者は、わざわざ時間とコストをかけて、リアル店舗に足を運んでもらえる「価値」とは何なのか? を自問自答し続けることが重要である。
 リアル店舗の価値を真剣に追求するためには、「人手を減らして販管費を減らし、営業利益を増やす」といった会社の御都合主義を否定し、今取り組んでいることが本当に顧客のためになるかどうかを常に優先する、真の「顧客第一主義」に転換できるかどうかが何よりも重要である。
 そして、ネットにはなくてリアル店舗だけが提供できる「触って試せる」「試食できる」「相談できる」「楽しい。ワクワクする」などの価値を磨き続ける必要がある。

 買物客がリアル店舗に期待するニーズは、以下の4つである。

(1)コンビニエンスニーズ
(近くて便利)
(2)ディスカウントニーズ
(安い。ただし安売りで広域集客は×)
(3)スペシャリティニーズ
(専門性、接客)
(4)エンターテインメントニーズ
(楽しい、わくわくする)

ネット販売にはない「リアル店舗のライブ感」を強化するためにも、「(4)エンターテインメントニーズ」の強化がとても重要になると思う。
 たとえば、低コスト化しているサイネージを活用して、店頭で動画を流す「店頭メディア化」による売場のエンターテインメント化も、2020年が本格的な普及の元年になると思う。
 第2は「生産性革命」である。2019年に日本国内の出生数が86万4,000人と、1899年の統計開始以来、初めて90万人を割り込む見通しとなった(厚生労働省の人口動態統計より)。
 一方、死亡数は137万6,000人と戦後最多で、自然減は51万2,000人と初めて50万人を超えた。日本という国は、人口減少が加速していることがわかる(図表2)。
図表2 人口減少時代の日本でGDPを成長させるためには、人口一人当たりの「労働生産性」を高めるしかない。
 しかし、日本のGDPの70%を占める、数字的には日本の基幹産業である「小売・サービス業」の労働生産性は、製造業よりもはるかに低く、米国の半分程度の低い労働生産性のままである。小売・サービス業の生産性向上が、日本という国全体の最大の課題といっても過言ではない。

 第3は「マスマーチャンダイジング」からの脱却である。1960年代以降の人口急増時代に成長した日本のチェーンストアは、「大量生産→大量消費」時代の「マスマーチャンダイジング」の成功体験から脱却できていない。
 しかし、人口減少時代のこれからの日本では、「不特定多数」の消費者に大量販売する手法は通用しなくなる。
 これからの日本の小売業は、不特定多数の浮動客相手の商売から脱却して、「特定多数の固定客(その店のファン)」を増やすことを目的にしたビジネスに転換する必要がある。2020年は、不特定多数のマスマーチャンダイジングとの決別の元年になると思う。

同質競争から
差別化・ブランディングへ

 第4は、「個別化(パーソナライゼーション)」の時代の到来である。これからの小売業は、不特定多数向けのテレビ広告やチラシ販促ではなくて、個客の購買行動や属性に紐づいた「あなたのための販促」(パーソナライゼーション)を目指すべきである。
 従来のチェーンストアは、販促や棚割を「画一化」することによって効率を追求するビジネスモデルだった。
 しかし、これからは…続きは本誌をご覧ください