「行動」が変化してこそ
「企業文化」は強くなる
筆者が20歳代の頃に、小売企業の経営者を取材すると、素晴らしい経営理念やビジョンに関する話を聞いて、大いに感激することが多かった。
ところが取材後に店舗に行くと、「社長が言っていることと、店でやっていることがずいぶん違うなぁ」とがっかりすることもまた、とても多かった。社長が言っていることは素晴らしいが、店頭現場がまったく異なる小売企業の多くは、その後に経営が悪化し、経営破綻することもあった。
こういう体験を何度も繰り返しているうちに、強い企業とは、経営トップの経営理念やビジョンを具体的な行動に落とし込んで、社員全員の行動が変わることに成功した組織であると確信するようになった。
企業経営は、「企業文化づくりに始まり、企業文化づくりに終わる」という言葉があるように、強い企業文化づくりこそが、強い組織をつくるための原理原則である。
強い企業文化をつくるためには、組織に属する全員の行動改革を実現しなければならない。たとえば、組織強化のバイブル「ハードボール理論」の中で、「意識は行動を変えない。行動が意識を変える」という格言があるように、まさに行動改革こそが強い企業文化づくりの出発点なのである。
しかし、強い企業文化づくりは一朝一夕にできるものではない。「こういう時にはこういう行動をとるべき」ということを繰り返し教育し、単なる知識ではなくて、組織に属する社員全員の行動の変化に刻まれたときに、初めて強い企業文化づくりは完結する。
現在、ドラッグストアは店舗数が1,000店を超えている企業が7社も存在する。これだけの大量の店舗の現場が、「指示待ち族」ではなくて、「こういう時にはこういう行動をとるべき」と自主的に判断できる強い企業文化をつくった組織が、次の10年の勝者になると考える。
完全作業こそが
最優先の売上対策だ
1社で大量の店舗を運営するチェーンストアの「行動改革」のキーマンは、店舗運営部に属する「スーパーバイザー(エリアマネジャー)」「店長」である。個人商店の店主は自分で仕入れて、自分で売る。それに対して、チェーンストアは、仕入れ・企画担当の「商品部」と、店舗オペレーションの実行担当の「店舗運営部」に分業化することが組織開発の出発点である(図表1)。
MD(マーチャンダイジング)が成功するか失敗するかの70%は、店舗運営部の……続きは本誌をご覧ください