米国「食品」小売業で起きた
ワンストップショッピングの歴史
今月号では、これからの狭小商圏時代の主力フォーマット(業態)と思われる「フード&ドラッグ+調剤」に挑戦している「ツルハドラッグ仙台新田東店(宮城県)」と「ハシドラッグ川俣店(福島県)」を紹介した。近年、多くのドラッグストア(DgS)が生鮮食品を含むフードをラインロビングした店舗に挑戦している。
食品業界に詳しい専門家からは、食品の素人であるDgSの食品売場は、食品のプロであるスーパーマーケット(SM)の食品売場には勝てないという話をよく聞く。それは本当なのだろうか?
図表1は、1980年代後半から1990年代前半に起こった米国小売業のワンストップショッピング追求の歴史を整理したものである。図表1の左側は、米国の食品小売業界で起こったワンストップショッピングの歴史をまとめたものである。
1970年代~1980年代の食品SMは、近隣型の商業集積であるNSC(ネイバフッドショッピングセンター)の核店舗として入居し、非食品業態のDgS、VS(バラエティストア)と軒を並べて出店していた。その後、SMは非食品の売場面積を拡大してSSM(スーパースーパーマーケット)に大型化し、最終的にはコンビネーションストア(フード&ドラッグ+調剤)に進化していった。
1997年に当社の第1回米国視察ツアーで、NSCに入居していたDgSの買上点数がわずか2点であると聞いて驚いたことを今でも覚えている。買上点数2点という意味は、「買物カゴのいらない店」ということである。
つまり、ほとんどの買物はコンビネーションストアでワンストップショッピングできる。短時間で買物したいときや、かかりつけ薬剤師に会いに行く来店動機しかない存在が、当時のDgSであったわけだ。
その後、1990年代に入って米国のDgSは、NSCよりも住宅地に近い立地に、フリースタンディングで出店し、さらに、ドライブスルー調剤を始めた。
つまり、日本のコンビニのように、日常的な買物が自宅からもっとも近いという買物の便利性を追求し、車から降りなくても調剤を受け取れる調剤受取りの便利性も追求した。その戦略が成功し、買物の便利性と調剤の専門性を強化し、コンビネーションストアやウォルマートと完全に差別化された業態として生き残った。
一方、食品SMから始まった非食品+調剤のラインロビングの歴史は、コンビネーションストアが最終的なワンストップ業態として確立された。
米国の歴史を定点観測していた当時の人達は、DgSは非食品業態であり、食品強化型DgSの業態開発は間違いであると主張する人も多かった。
米国「非食品」小売業で起きた
ワンストップショッピングの歴史