デジタル武装するウォルマート リアル店舗を増やすアマゾン 大量出店する小型ディスカウンター

新店を増やさないで
オムニチャネル化で成長

 今月号の特集は、アメリカ小売業の最新トレンドである。筆者が最後にアメリカ視察に行ったのが2019年11月であるが、特集を読むと、コロナ禍の3年間でアメリカの小売・流通業が劇的に変化したことがわかる。
 変化の第1は、(1)新店を開店しないでオムニチャネル化で成長するグループと、(2)大量出店を継続するグループに分かれたことである。
 世界最大の小売企業であるウォルマートは、コロナ禍の2020年からほとんど新規出店していない。2022年のアメリカ国内の設備投資額の内訳は、
「Eコマース・サプライチェーン・テクノロジー」というDXへの投資が67.8%とダントツで、次いで既存店改装投資が30.9%、新店投資はわずか1.3%に過ぎない(図表1参照)。
図表1 ウォルマートは、IT企業の買収にも積極的に投資してオムニチャネル化を進め、新規開店しないにもかかわらず、2020年から2022年までの3年間で売上も営業利益も大きく伸ばしている(24ページ図表1)。
 その他の大手小売業では、ターゲット、クローガー、ホームデポなども、新店投資よりも、DX・オムニチャネル化に大きく投資することで、売上と営業利益を増やしている。とくにターゲットは、「コロナ禍でもっとも成長した企業」の1社として評価されている。

大量出店を継続する
アルディ、ダラー・ジェネラル

 一方、アルディ、ダラー・ジェネラル(DG)のような小型のディスカウンターは、コロナ禍も大量出店を継続している。
 大量出店組のアルディとDGは、(1)売場面積300~500坪程度の小型店舗、(2)小商圏立地への出店、(3)リミテッドアソートメントストア(品揃えを絞り込んでいる)、(4)完全EDLP(エブリデーロープライス)、(5)PB比率が高い、といった特徴がある。
 小商圏に展開する便利な業態なので、まだ出店余地が多く残ってい
る。現在、約1万8,000店を展開するダラー・ジェネラルは、毎年1,000店の新店を開店する大量出店を継続している。将来的には全米で3万5,000店の店舗網の構築を目指している。
 絞り込んだ品揃えであるが、ショッパー(買物客)の評価は高く、アルディは「友人に勧めたいスーパー」のランキングで、日本でも有名なトレーダージョーズと並んで1位の評価を獲得している。

オムニチャネル化が
成長のキーワード

 第2の変化は、……続きは本誌をご覧ください