小売業の経営者が売場を見て怒ることは2つある。ひとつは「欠品」である。在庫が売場にあれば売れたはずの商品を、欠品によって売り逃すことを経営者は例外なく嫌がる。しかも、たくさんの店がある中でわざわざ来店したのにも関わらず欠品することで、お客からの信頼を失うことも恐れる。
第2は、「過剰在庫、不良在庫」である。過剰在庫、不良在庫によって、資金繰りが悪化することを、とくにオーナー経営者は本能的に嫌がる。
しかも、損益計算書に記載される売上、粗利益、営業利益などの数値は日常的に気にしている人が多いが、貸借対照表に記載される「不良在庫」の存在はあまり気にしない商品部、店舗運営部が多い。
しかも、高値入率の不良在庫は、売場に投入すると、短期的には粗利益も営業利益も増える。
しかし、現金化できない売場の不良在庫を放置しておくと、何年かすると資金繰りが悪化する。高値入率のPBが失敗するのは、大体はこの繰り返しである。
年末・年始商戦明けの時期は、売場に不良在庫・過剰在庫が沈殿する時期である。
今月号では、改めて在庫管理の重要性を提起し、「経営感覚」を持つ中堅幹部にとって必須の原理原則をまとめてみる。
売場の在庫日数が長期化することは、店舗のキャッシュフロー悪化に直結する。
たとえば、年商10億円の店舗の在庫日数が36.5日(年10回転)だったと仮定する。ところが、死に筋在庫が幅を利かせて在庫日数が長期化し、在庫日数が60日になったとする。60日-36.5日=23.5日も在庫日数が増えたことになる。
それが、店舗のキャッシュフローに与える悪影響を、以下のような年商÷365日×在庫日数増加分で計算してみる。
10億円÷365日=約274万円(1日当たりの売上)274万円×23.5日=6,439万円
在庫日数の長期化によるマイナスのキャッシュフローが6,439万円となる。つまり、この店の経営者は、1年間で6,439万円の資金を銀行から借りるなどして調達しなければ、資金ショートを起こす危険性があるという意味である。
ただし、在庫管理で注意すべき点は、在庫責任は、あくまで商品部が中心であり、店舗に在庫責任を持たせ過ぎないことである。
「在庫を減らせ」と指示された店舗は、大量に陳列すれば売れるはずの商品の陳列量を減らしてしまう傾向がある。また、品切れしてはならない売れ筋の「臆病発注」に走ってしまう傾向があるので、注意が必要である。
在庫管理のポイントの第1は、………続きは本誌をご覧ください