あなたの店は本当に「便利な店」なのか?

立地は便利だが売場は便利ではない店

以前から、流通関係者の間でよく聞かれる話。「オーバーストア時代になって、近くて便利なだけの店では生き残れないよね。差別化戦略を考えなきゃ…」。果たして本当にそうなのだろうか?そもそもあなたの店は本当に便利な店なのだろうか?
便利性の高い店舗の第1の条件は、自宅から近くにあるという立地の便利性である。また、駐車場に入りやすい、出やすい店舗設備をつくることも便利性の追求である。小商圏フォーマット開発とは、便利性の追求作戦である。
そして、便利性の高い店舗の第2の条件は、「欲しい商品が探しやすく選びやすいので、短時間で買物ができ、必要な商品を関連購買でき、コーディネートできること」である。
つまり、よく聞かれる話の正しい表現は、「家から近いだけの便利な店では生き残れないよね。地域の消費者にとって本当に便利な売場を追求しないと競争に勝てないよね」である。
競争激化による差別化戦略というと、「接客」、「専門性」の強化を掲げる企業が多い。しかし、誤解を恐れずに言うならば、「接客」、「専門性」の強化よりも、「便利性」の追求こそが、最も優先順位が高く、重要な差別化戦略である。
消費者が小売業に求めるニーズは、図表1の4つのニーズである。その中で最も強いニースがコンビニエンスニーズ(便利性)である。「近くて便利」が、消費者が店舗に期待する最も強いニーズである以上、小売業としての最大の差別化戦略は、「便利性」を追求することである。

201307zuhyoしかも、インターネット販売の発達によって、年に数個しか売れない商品も在庫する「ロングテール」のビジネスモデルが成立している。デプスアソートメント(深い品揃え)による専門性(スペシャリティニーズ)追求に関して、リアル店舗はインターネットには絶対に勝てない。
また、全国もしくは世界を販売市場にできるインターネット販売は、単品大量販売が実現しやすく、価格競争力もリアル店舗より優位性が高いかもしれない。
そうすると、コンビニエンスニーズ(便利性)と、エンターテインメントニーズ(楽しい、人と人との触れ合い)の2つが、リアル店舗がインターネット販売と差別化するために、究めなければならない重点ニーズと言えるであろう。
自分達が思っているほど、あなたの店は便利ではない。先日も某ドラッグストア(DgS)の売場を視察した。通路幅が狭くて、ショッピングカートでは通路に入れない。無意味に品目数が多すぎて、何を買えばいいのか分からない。しかも、売れ筋の陳列量が少ないので、商品が探しにくく、売れ筋が欠品している。
「使う立場、買う立場」のTPOS分類になっていないので、欲しい商品がどの通路にあるのか分かりにくい、同時に使う商品の売場が遠く離れている。一方で、自分達が売りたい「値入率の高い高単価商品」がほとんどのエンドを占有し、売り込みPOPばかりが目立つ。立地は便利だが、売場は便利ではない店は多い。(…続きは本誌をご覧ください

月刊マーチャンダイジング 2013.7月号