小売業の経営構造は、図表1の4つの経営指標で説明できる。競争環境が激化すれば、小売業の重点数値は、「売上」から「利益」に変化していく。
図表1のA店は、SPA(製造直売小売業)型の専門業態の経営構造である。坪効率(売場面積1坪当たり年間売上高)は90万円と低いが、PB(プライベートブランド)比率が高いために坪粗利が60万円と高くなる。坪粗利から坪経費を引き算した坪営業利益は12万円と高い。小売業の坪営業利益の目標は、年10万円突破なので、A店は、そんなに売れていないが、とても儲かっていることが分かる。
一方、B店は坪効率350万円の繁盛店であるが、売場に経費が掛かりすぎていて、坪営業利益は2万円しか出ていない。「売れているから、必ず儲かっている」とは限らないのである。
チェーンストア経営において、売上高を増やす、粗利益高を増やすこと以上に、「経費」をコントロールし、「低売上でも儲かる業態」を確立することは、重要な経営戦略である。経費の低さは、競争に打ち勝つための基礎体力でもある。ローコストオペレーションを制するものが競争を制するといっても過言ではない。
それでは、ローコストオペレーションを実現するための5つの経営対策を、以下に整理してみよう。
ローコスト対策(1) 高密度ドミナント出店
ローコストオペレーション実現のための第1の経営対策は、高密度のドミナント出店である。チェーンストア経営は、商圏分割しながら、同一商勢圏に高密度で店舗網を展開することで、「地域シェア率」の最大化を図るビジネスモデルである。1店舗当たりの売上高の高さよりも、商勢圏内の店舗網の地域シェア率を重視する。
「ランチェスターの法則」によれば、同一商勢圏内で圧倒的な地域一番シェア率を獲得した小売企業は、すべてのコストが低下し、営業利益高が大きく増加すると言われている。
例えば、高密度で店舗展開することで、物流センターを中核としたオペレーションが実現でき、物流コストが大きく低下する。また、「検品作業」や「カテゴリー納品仕分作業」(通路の両側に陳列する商品を同一オリコンに入れる)を物流センターで行うことで、店舗の店内作業コストは大きく下がる。
さらに、商勢圏内で高い地域シェア率を獲得することで、メーカーからの仕入れ条件が有利になり、仕入れコストの低下につながる。
(…続きは本誌をご覧ください)
月刊マーチャンダイジング 2013.9月号