狭小商圏時代の小売店舗はバラエティストア化する

 現在、2つの理由によって、リアル店舗のバラエティストア化が進んでいる。
 第1の理由は、オーバーストア化とインターネット販売の発達によって、リアル店舗の「狭小商圏化」が加速し、1店舗当たりの商圏人口と商圏距離がどんどん減少しているためである。コンビニエンスストアの商標距離は、以前は半径500m程度と言われていたが、最近は半径350mまで縮小している。
 また、ネット通販が発達することによって、1年に1個しか売れない死に筋商品も在庫できる「ロングテール」というビジネスモデルも成立している。その結果、リアル店舗がネット販売と差別化するためには、「近い」、「便利」、「ワンストップショッピングができる」という「コンビニエンス性(便利性)」を強化しなければならない。つまり、ネット販売と差別化するために、「近くて便利」を追求するリアル店舗の狭小商圏化が加速しているのだ。
 狭小商圏化が進んだリアル店舗が、限られた商圏人口で売上と客数を増やすための対策の基本は、「1人当りの支出金額」を増やすことである。
 そのためには、1店舗における1人当り消費者の「買物目的」を増やす必要がある。つまり、商品群(カテゴリー)もしくは品種(ライン)の種類を増やし、ラインロビングに挑戦し、バラエティストア化を進める。その結果、1店舗でいろいろな商品を関連購買(ワンストップショッピング)できる「便利な店」を目指すというストーリーになる(図表1参照)。
 第2の理由は、ドラッグストア(DgS)だけの独特なものだ(図表1参照)。医薬品のネット販売解禁、他業態の医薬品売場強化が進むと、DgSの医薬品部門の「売上構成比」と「粗利益率」が低下する。
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 その結果、医薬品で儲けて、他はロスリーダー的なマージンミックスが崩壊し、医薬品以外の高収益部門、高収益商品群の育成が急務になり、結果としてDgSは「バラエティストア化」する(本誌2013年8月号の「今月の視点」参照)。
 ここ数ヶ月の間に本誌が積極的に取り上げた「新業態」の実験は、方法論は多少異なっていても、基本的には狭小商圏時代という変化に対応した「ラインロビング」と「バラエティストア化」の実験である。

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