食の「非日常」に近づくSM  食の「日常」に近づくDgS

構造的な不振が続く食品スーパーマーケット

 SM(スーパーマーケット)の苦戦が何年も続いている(図表1)。「日銭商品」なので、最も倒産しにくい業態といわれたSMであるが、経営破たんする地方SMが増加している。なぜなのだろうか?
 僕が独立前に在籍していた流通専門誌では、食品担当の編集記者が主流だった。HC(ホームセンター)やDgS(ドラッグストア)のような非食品業態の担当記者だった僕は、社内では傍流だった。
 そりゃあそうだ。食品市場は圧倒的に大きく、当時、DgSが提唱していたHBC(ヘルス&ビューティー)など、ちっぽけな市場でしかなかった。
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 SMの不振は、構造的な問題が原因である。構造的な原因の第1は、SMが消費者の購買行動の変化に対応できなかったことである。
 先日、生鮮(アウトパック)を含む食品売り場を拡大して絶好調のDgSを視察した。そのDgSの隣には地元のSMが隣接していたが、冷凍食品売場を壁面で展開しているDgSの食品売場の方がに賑わっており、隣のSMは閑古鳥が鳴いていた。
 そのSMの売場を一周して分かったことは、もはや生鮮4品を核としたSMの食品売場は、専業主婦が大半の時代のような「食品の日常的な買物の場」ではなくなってしまったという確信である。
 生鮮4品を壁面で配置するSMの売場レイアウトは、専業主婦が家族4〜5人の夕食の材料を購入するのに便利なレイアウトである。しかし、働く女性の増加、老夫婦世帯の増加などの核家族化によって、食品80兆円市場の中で、もっとも衰退している市場が、SMがメインとしている「夕食の材料としての生鮮市場」である。
 さらに、専業主婦が夕食の献立の材料を購入するという市場は、日常的な市場から、非日常的な市場へと変化している。今回視察した地方都市のSMの顧客の多くは、共働き、もしくは老夫婦二人の世帯である。例えば、息子は東京の大学に行き、娘は結婚して大阪に住んでいる。老夫婦二人で夕食の材料を買って調理しても食べきれず、かえって高くつく。
 日常的な食事は、コンビニ(CVS) の調理済みの食品や、DgSの冷凍食品、焼きそばをつくれる材料(もやし、豚こま肉)を売っているDgSの「アウトパックの生鮮」で十分である。
 お盆やお正月に久しぶりに息子と娘が帰ってくる。久しぶりに家族が全員そろう。お母さんは久しぶりに家族の夕食の材料を購入するために、鮮度の良い生鮮食品を取り扱うSMに買物に行く。
 「家族団らんの夕食」という光景は、もはや「日常」よりも「非日常」に近くなっている。
 少し乱暴な論理展開ではあるが、生鮮4品を核としたSMの食品売場は、消費者の購買行動の変化によって、どんどん「非日常的な買物の場」に変化している。
 SM業界が、「生鮮の鮮度強化で差別化する」と声高に叫べば叫ぶほど、「日常」から「非日常」の市場にシフトする結果になっている。

売っても儲からないSMの生鮮売場

 つまり、壁面で冷凍食品を展開しているDgSや、調理済み食品主体のコンビニの食品売場の方が、食の新しい購買行動からすると、「日常的な買物の場」であると感じる消費者が増えている。
 DgSの食品強化は、食品の安売りによる「集客手段」というよりも、消費者の購買行動の変化が生み出した「必然」である。
 しかし、…
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