狭小商圏対策 〈1〉 来店頻度を増やす
小売業全体の「売上成長率」よりも、「売場面積増加率」の方が高いオーバーストア時代に突入して久しい。その結果、日本の小売業の1店舗当たりの商圏距離は狭くなり、商圏人口も減少している。「狭小商圏時代」の到来である。
今月号で紹介した「イオンモール幕張新都心」のように、話題性、エンターテインメント性を徹底的に強化することで、唯一無二の来店動機を創り、より広域商圏からの集客を図ることも、オーバーストア対策である。
しかし、ほとんどの小売業は、そんな投資はできず、1店舗当りの商圏距離と商圏人口が減少している状況だ。
この狭小商圏時代に、売上と客数を増やすための基本対策は、以下の3点である。
第1の対策は、顧客の「来店頻度」を高めることだ。
例えば、オーバーストアによって商圏人口3万人が、半分の1万5,000人に減少したとする。極端な話、来店客の月間の平均来店頻度が1回のまま変化しなければ、客数は半分に減少してしまう。しかし、来店頻度が月2回になれば、商圏人口は半分になっても、客数を維持することができる。来店頻度の向上作戦は、最も重要な狭小商圏対策である。
来店頻度を増やす基本対策は、ラインロビング(品種の種類を増やす)を行うことで、買物目的を増やすことである。結果として、狭小商圏業態は「バラエティストア化」していく。
さらに、来店頻度を増やすカテゴリー(食品、日配、オーラルケア…etc.)や、サービス(写真プリント、おいしい水の給水サービス…etc.)を強化することも重要である。
かつては、豆腐、牛乳、納豆などの日配品を取り扱うDgS(ドラッグストア)に対して、「美と健康の専門店であるDgSなのに、豆腐や牛乳を取り扱うのは変だ」と揶揄(やゆ)する意見も多かった。
しかし、日配品のラインロビングは、狭小商圏化しても客数を増やすための基本対策である。「日配品」という総称は、日持ちがしないので毎日のように配達する商品という意味だ。顧客からしても、日持ちがしないので買い置きができず、週に何回も購入する商品である。つまり、日配品は、来店頻度を増やしてくれる典型的なカテゴリーなのだ。
また、来店頻度を増やす「キーアイテム」として、最近は、「バナナ」「もやし」を、強化するDgSが増えている。狭小商圏化に対応するためにバラエティ化することは、DgSとして邪道ではなくて王道である。
差別化するためという理由で、医薬品や化粧品の専門性を強化するだけでは、狭小商圏化には対応できない。むしろ、専門性強化という戦略は、広域商圏化しなければ業態としては成立しない。
逆説的にいえば、来店頻度を増やし、客数を増やすことによって、結果として、医薬品や化粧品のような専門性の高いカテゴリーの売上も増えるのだ。
2013年の『ドラッグストア白書』(2013年10月号参照)によれば、株式を上場しているDgS企業の中で、「医薬品」の売上を前年比で2桁伸ばした企業は、クスリのアオキ(前年比16.6%増)とコスモス薬品(前年比15.9%増)の2社だけである(その他の13社はすべて一桁の売上成長率)。
同様に「化粧品」の売上を前年比で2桁伸ばした企業も、クスリのアオキ(前年比15.1%増)とコスモス薬品(前年比13.2%増)の2社だけである。
両社に共通することは、積極的に食品強化とラインロビングを行い、来店頻度を高めることで客数を増やし、既存店の売上高を大きく増やしたことである。
つまり、来店頻度の向上作戦は、DgSの「核売場」である医薬品と化粧品の売上増加作戦でもある。
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