不特定多数のマス化から 特定多数のマス化を目指せ

儲けるためには信者を増やすべきだ

 「儲ける」という漢字を分解すると「信」+「者」という2つの言葉に分けられる。つまり、儲けるためには、信者を増やさなければならないという意味が、一言の中に集約されているわけだ。漢字ってすごいですね。
 継続的に顧客を増やし、顧客満足を最大化させるためには、その店や商品の信者(熱狂的なファン=固定客)を獲得し続けなければならないというのは、商売の真理である。
 信者を増やすための要素は、さまざまだ。もちろん「低価格」の追求は、小売業にとって信者を獲得する最大の武器である。
 総務省統計局の家計調査によれば、税負担や物価の上昇によって世帯平均の可処分所得が減少しているにもかかわらず、家計所得は増えていない(4ページの記事参照)。つまり、「消費の個性化」「価格より価値」などのマーケッターの薄っぺらな戯言に惑わされず、現在の小売業は堂々と低価格を追求すべきであり、それが店の信者を増やす最大の対策である。
 「よりよいものをより安く」が、古今東西を問わず商売繁盛の条件である。しかし、アメリカの小売業を定点観測していると、最近繁盛している店は、「よりよいものをより安く」+αの魅力を共通して持っている。
 先日、本誌で何度も取り上げている「Trader Joe’s(トレーダージョー)」を米国で視察してきた。毎年定点観測しているが、相変わらず繁盛している。
 同社は売場面積300坪程度のEDLP型の小型スーパーマーケットであるが、1店当たりの平均年商は26億円、坪効率はなんと860万円の超繁盛店である。品目数は約3,000と驚くほど絞り込まれているにも関わらず、これだけの年商を稼いでいる。
 まさに、店と商品(90%はトレーダージョーブランドのSB[ストアブランド])の熱狂的な信者を増やし続けていることが分かる。
 アメリカの消費者がトレーダージョーの信者になる最大の理由は、「よりよいものをより安く」を実現しているからである。
 「オーガニック」というこだわった食品を主体にしながらも、驚くほどの低価格を実現しており、それが同店で買物することの驚きと感動につながっている。

モノを売るのではなくてライフスタイルを売る

 しかし、トレーダージョーの魅力は安さだけではない。…(続きは本誌をご覧ください