「現場主義」と「現場まかせ」は 似て非なるものである

「現場まかせ」の組織では真の競争力を持てない

 「現場主義であること」は正しい。当社も、机上の空論よりも、「現場・現物・現時点」の情報発信を重視している。しかし、「現場主義」と「現場まかせ」はまったく意味が異なる。
 ダメな経営者(上司)の言う「現場主義」とは、現場のガンバリズムにまかせるという意味である。経営者(上司)は現場主義といいながら、現場の自主性を重視するという耳触りの良い言葉を使って、実際には現場の悲惨な状況から目を背ける、もしくは業績悪化の原因を現場に押し付けるための「逃避行動」であることがほとんどである。
 日本の組織は、現場スタッフのモラルやレベルが高いことが特徴である。上司から言われた販管費率や人時生産性の数値を達成するために、日本の現場スタッフの多くは、サービス残業を自主的に行い、無理に無理を重ねて目標の経費予算を達成している。つまり、仕組みによって達成したローコストではなくて、「現場あわせ」の結果のローコストであることがほとんどである。
 私は「日本型組織」の最大の弱点は、現場力が強すぎることであると考えている。一方、海外の企業の現場スタッフは、決められた職務以外の業務は絶対にしない。ましてやサービス残業などするはずもなく、作業が終わっていなくても、時間になればさっさと業務を中断して帰宅する。契約社会だから当然である。その結果、海外の企業は、現場まかせでは作業が崩壊してしまうので、「仕組み」をつくることによって完全作業を達成しようとする。
 それに対して日本型組織は、現場のモラルとレベルが高いがゆえに、仕組みをつくって業務を遂行するという面が遅れている。つまり、日本型組織の現場力の高さは、企業の競争力を弱体化させる欠点でもある。
 現場あわせで短期的には凌ぐことができても、長期的には現場は疲弊し、構造的なローコストではないので、徐々に経費は上昇していく。
 以前、あるDgS(ドラッグストア)の本部から店舗に毎月届く「販促企画書」を見せてもらったことがある。100ページ近い販促企画書を見ながら、店長に「こんなに膨大な販促指示を1カ月で本当に実行できるの?」と質問したら、「できるわけがないじゃないですか」と自嘲気味に失笑したのをいまでも覚えている。
 これが、売上を上げるために経営者や本部から、現場にありとあらゆる指示が、ありとあらゆる方向から降り注いで、現場が疲弊する日本型組織の典型的な光景なのだ。
 しかも本部は指示を出すことで安心して、その指示を実行したかどうかは確認しない。結果として、指示は膨大に出すが、不完全作業だらけで、大きな機会損失を発生させている。

現場のコスト削減策は根本的な解決ではない
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