「非効率」な企業は退場し「効率の良い」企業だけが生き残る

× 大商圏低シェア
○ 小商圏高シェア

 「変化」はなだらかには起こらない。必ず「階段」のように、ある時期に一挙に変化する。これは、約30年にわたり、流通・小売業の栄枯盛衰を見てきた筆者が何度も目撃してきた経験法則である。
 そういう意味で2015年は、過去のビジネスモデルが一挙にダメになり、新しいビジネスモデルが一挙に花開く「階段」の年である。階段を上るか、下りるかは、新しい時代のビジネスモデルに変化対応できるかどうかにかかっている。
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 図表1は、今年以降、一挙に変化するキーワードを、過去と未来で比較したものである。最大の変化は、ネット販売との競争が激化し、リアル店舗の商圏距離と人口は、どんどん狭く、少なくなるということである。店が少なく、ネット販売もない時代は、「赤字販売」でもいいから、有名ナショナルブランド(NB・有名メーカー品)を激安でチラシに掲載すれば、広域から集客できて、大量に売ることができた。ところが、最近は、遠くの店舗に行くくらいなら、ネットで注文して翌日配達を選ぶ消費者が増えている。つまり、「薄利多売」のビジネスモデルが崩壊しているのである。
 昨年4月の消費増税後、既存店の売上が悪化している小売企業に共通するのは、「NBの低価格販売で広域集客し客数と売上を増やす」タイプの企業ということだ。一方、4月の増税後にすぐに既存店の売上が戻った小売業は、「小商圏で固定客の繰り返し来店によって客数と売上を増やす」タイプの企業である。SM(スーパーマーケット)ではヤオコー、ドラッグストア(DgS)ではコスモス薬品、クスリのアオキなどである。
 広域集客型の小売業が苦戦するのは構造的な問題である。したがって、GMS(総合スーパー)の業績が悪いのは、景気のせいなどではなくて、構造的な問題といえる。
 イオンモールのように、休日に家族でぶらぶらするエンターテインメント施設としての価値はあるが「日常的な買物の場」としては大商圏すぎるからだ。
 一方、コンビニの商圏距離も、以前は半径500mといわれたが、最近は半径300mまで狭くなっている。これからの小売業は、いかに狭い商圏の中で、客数と売上を増やすかに知恵を絞らなければならない。

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