かつて「150坪ドラッグストア」はなぜダメになったのか?

明暗が分かれた消費増税後の業績

 本号41ページの図表は、株式を公開しているドラッグストア(DgS)企業の「既存店売上高」の前年比伸び率の推移である。
 昨年4月は、消費増税の影響によって多くの企業が、既存店売上を前年比で大きく低下させている。一部、4月の前年比伸び率がプラスの企業は、締日が15日、20日の企業であり、増税前の3月の駆け込み需要が反映されていることが原因であり、そのぶん5月の既存店売上が大きく低下している。
 消費増税の影響で、昨年4月、5月の既存店売上が大きく落ち込むのは当然である。しかし、その後、既存店売上が早期に回復した企業と、既存店売上が低迷している企業に明暗がはっきりと分かれる結果となった。
 早期に既存店売上が回復したDgS企業は、コスモス薬品、クスリのアオキなどである。一方、既存店売上がマイナスを継続している企業は、マツモトキヨシ、サンドラッグ、カワチ薬品などである(2015年3月は昨年3月の駆け込み需要の影響で各社マイナスになっているが)。
 明暗が分かれた理由は、どこにあるのだろうか? 結論からいうと、固定客の繰り返し来店によって売上と客数を増やす「小商圏高シェア」型のDgS企業が早期に売上を回復した。
 一方、低価格によって不特定多数の浮動客を広域集客する「大商圏低シェア」型の企業の既存店売上が低迷している。
 既存店売上が早期に回復したコスモス品とクスリのアオキは、食品売場を拡大していることが特徴である。当然、食品は近隣住民の固定客の繰り返し来店を促進する商品であり、小商圏高シェアを実現するための戦略部門である。
 一方、食品よりも商圏人口を多く必要とする「化粧品」「医薬品」を低価格で販売し、広域集客することが得意のマツモトキヨシとサンドラッグの既存店売上が消費増税後も低迷している。
 また、コスモス薬品は、食品を日替わりチラシに目玉価格で掲載して広域集客する「ハイ&ロー」(価格を上げ下げする)の販促は行わず、EDLP(エブリデーロープライス。毎日同じ低価格)の売り方である。
 従って、ディスカウント業態ではあるが、広域集客ではなくて、「低価格」と「便利性」の魅力で、近隣の固定客の繰り返し来店によって成立している。
 いずれにしても、「低価格販売で広域集客」というビジネスモデルが崩壊していることが、消費増税後の既存店売上の明暗の最大の原因である。

固定客を増やすために「基本」を徹底する

 固定客の繰り返し来店によって成立する商売で重要なことは、…

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