小売業は「立地産業」である 人口減少、都心流入に対応せよ

小売業の総売上も
人口も減少している

 第二次世界大戦後、50年間にわたり右肩上がりで成長を続けてきた小売業の総売上高は1996年(平成8年)の147兆7,000億円をピークに減少が続いている。
 図表1の2001年(平成13年)と2011年(平成23年)の10年間の比較で見ても小売業の総売上高は約2%も減少していることが分かる。総売上高がピークだっ1996年と比較すると、金額で13兆7,000億円も売上が減少し、比率ではこの20年間で約10%も小売業の総売上高が減少していることがわかる。
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 図表1の業態別で見ると、百貨店、総合スーパー、ホームセンターが、この10年間で売上高を減少させている一方で、コンビニ、ドラッグストア(DgS)、通信販売は売上高が増加している。

 リアル店舗では、特にDgSの総売上高が、10年間で2倍以上(2.7兆→5.6兆円)に成長しており、この10年間で最も成長した業態といっていい。
 一方、通信販売を除くリアル店舗の総売上高は2001年(平成8年)の134.3兆円に対して、2011年(平成23年)は129.3兆円と減少幅が大きくなり、この10年間で率にして4%もリアル店舗の総売上高が減少していることがわかる。
 小売業の総売上高減少の最大の要因は、人口減少と高齢人口(65歳以上)の割合の増加である(16ページの図表2参照)。高齢人口の割合が増加(2015年で26.8%)すると、総人口の減少率以上に消費支出は減少する。高齢化率が高まると、「一人当たりの食べる量」が減少し、「買物のための移動距離」(商圏範囲)が狭くなるからである。
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安売りしても
市場は大きくならない

 小売業は「立地産業」である。高度経済成長時代には、郊外で新生活をスタートするニュータウン(ベッドタウン)の人口がどんどん増加し、モータリゼーションの発達で消費者の移動範囲が飛躍的に広がった。その結果、都心や駅前立地の商業が衰退し、駐車場を広く確保した郊外型のSC(ショッピングセンター)やロードサイド店舗が成長した。
 当時のイオンのSC開発のキャッチフレーズは、「ウサギやタヌキの出るような田舎」に大型SCを開発し、車による流入人口を増やし、街づくりを行い、人の少ない田舎に新しい立地を創造することだった。
 ところが、近年は…

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