企業文化づくりに始まり 企業文化づくりに終わる

変わらないものと
変わり続けるもの

 「不易流行」という言葉があるように、事業を長く継続している企業は、変わらないものと、変わり続けるものの2つを必ず同時に持っている。
 時代を超えて決して変わらないものとは、強固な経営理念・経営哲学である。しかし、言葉だけの経営理念では、絵に描いた餅で終わってしまう。
「顧客第一主義」という経営理念を掲げながら、売場に行くと、「企業の儲け第一主義」の小売企業はたくさん存在する。
 普遍的な経営理念は、例えば「顧客第一主義」という経営理念を言葉として繰り返すと同時に、「顧客第一主義」のための「行動」とは何かを明確に規定し、組織に属する人材の「行動」が変化し、定着することで完結する。
 つまり、なにかの問題が発生した時に、組織に属する人材のすべてが、顧客第一主義を具現化する同じ行動を取るようになったときに、その企業は、普遍的な経営理念を具現化できる組織になったといえる。
 組織に属する人材の「言葉」と「行動」が一致した状態のことを「企業文化」という。強い組織は、例外なく、「企業文化」を強く、太くし、普遍的な行動原理として定着させている。
 企業経営は、「企業文化づくりに始まり、企業文化づくりに終わる」といわれている。
 かつて、東日本大震災が発生した直後、電気も水道も通らず、本部とまったく連絡が取れない状態の中で、あるドラッグストア(DgS)の店長が自主的に店を開けて、100円、200円、500円と釣銭の出にくい値付けをして店を開けた。震災の被害で店内が散乱しており危険なので、お客様には店の入口で待ってもらい、お客様の欲しい商品を社員が店内に取りに行って販売した、という逸話を当時取材したことを覚えている。
 この企業は、本社からの指示がなくても、緊急時にもっとも地域の顧客に喜ばれる行動を店長が自主的に判断し、実行したわけだ。つまり、この企業は、「こういう場合には、こういう行動をすべき」という普遍的な行動原理が企業文化として定着していたのである。
 一方、本部と連絡が取れないので、何も行動できなかった「指示待ち中間管理職」しかいない企業もあった。本部の指示がないと何もできなかった企業と、前述のように自主的に行動できた企業とでは、その後の成長に大きな格差が生まれた。
 組織に属する全員に行動原理として深く浸透した「企業文化」を持つ組織は、競合に対する競争力も強く、顧客第一主義という理念の実行力も強く、結果として顧客満足(CS)を最大化することができる。

変わり続けることが
唯一の成長戦略

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