ネット販売がどんどん進化している。アメリカのアマゾンは、洗濯洗剤やコーヒーが切れそうになった瞬間に「アマゾンダッシユボタン」を押せば、いつも使っている消耗品が当日か翌日に届くサービスを開始した(写真1)。
ダッシュボタンを提供するメーカー向けに、アマゾンが発信するキャッチコピーは「Never miss the special moment(特別な瞬間を見逃しません)」である。つまり、消耗品が切れて、忘れないように商品名をメモして買物に行ったり、買い忘れてがっかりするという買物ストレスをなくし、切れたその瞬間に注文できるようにしたわけだ。
また、ニューヨークのマンハッタンに100ヵ所以上設置されたアマゾンロッカーは、宅配を待つストレスをなくし、行きたいときに、アマゾンで注文した商品を近くのロッカーで受け取れるようにするサービスだ。ダッシュボタンもロッカーも共通する目的は、買物に関するストレスをなくすことである。
これからは、ネット販売もリアル店舗も、ストレスフリーの買物環境を提供できるかどうかが、星の数ほど購入手段がある中で、「選ばれる店」になるための最優先の経営課題になる。
買物ストレス(1)
商品を探すストレス
50坪の小型店だろうが3,000坪の大型店だろうが、買物客からもっとも聞かれることは、「この商品はどこにあるのですか?」という商品探しに関する質問である。消費がパーソナル化し、品目数が増加している現代は、店に来て商品を探すストレスが増加している。
アメリカのSM(スーパーマーケット)のラルフスでは、清掃のパートに至る売場スタッフ全員に、商品の売り場所を徹底して覚えさせる教育を実施し、迷ったり、探したりしている買物客がいると、すぐに声をかけて売場に案内する活動を強化している。また、DS(ディスカウントストア)のターゲットは、スマートフォンに専用アプリを入れると、探している商品が、その店のどこで売っているかを地図で表示するサービスを提供している(写真2)。
日本でも、コスモス薬品の「売場案内」は徹底している。以前、毛抜きというマニアックな商品の場所を、複数のコスモス薬品で質問したことがある。まずは、衛生用品の売場まで誘導してくれて、質問者の目を見ながら、「お客様のお探しの商品はこちらにございます」と笑顔で接客した。さらに、「化粧品コーナーにも毛抜きがございますが、そちらにも御案内しましょうか?」と言われた。どの店に行っても、誰に質問しても、これと同じ接客を受けた。いかに売場案内に関する教育が徹底されているかが分かる。
その結果、コスモス薬品は、ディスカウンターでありながら、低価格だけが魅力ではなく、「親切で接客の良い店」という評価も高く、小商圏で多くの固定客を獲得している。
買物ストレス(2)
レジ待ちのストレス
レジは、買物客が最後に通過する「関所」のような場所である。買物客が店の印象を決める最重要地点である。いくらお買い得商品を買って喜んでいても、最後のレジで嫌な思いをしたら、それまでの幸せな買物体験は吹き飛び、「なんて不親切な店なの」という悪い印象しか記憶に残らない。
「顧客満足(CS)」の向上を経営戦略の中核に据えてV字回復したSMのクローガーは、顧客満足向上の一環で、「Qビジョン」という監視カメラのような機械を入口に設置して、来店客数に基づいてレジの混雑時間をコンピュータが予測し、平均レジ待ち時間を4分から30秒に短縮した。
さらに、テレビCMで「クローガーはお待たせしません」ということをアピールし、クローガーを選ぶ地域の固定客を増やした。
一方、
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