競争力のない店舗を
放置する理由
先日、郊外立地の某ドラッグストア(DgS)をたまたま視察して驚いたことがあった。その理由は、10~20年前に開店したと思われる売場面積も小さく競争力のない古い既存店を、何店舗も増床も改装もせずに放置していたからである。
10年以上前に開店した店舗は、売場面積が狭く、商品を陳列する場所も少ない。「はみ出し陳列」「島陳列」だらけの倉庫のような店舗だった。現場の判断で「コトPOP」を付けるなど売り方を工夫していたが、付け焼刃の対策に過ぎず根本解決には至っていない。
この店舗で働く現場の社員を責めることはできない。根本的な問題は古い既存店を放置していることであり、経営者に責任があるからだ。
小売業の「店舗年齢」は全店で5年を維持することが原則である。改装(もしくは増床)することで既存店の店舗年齢はゼロになるので、既存店を計画的に改装し、店舗年齢を下げる努力をしなくてはならない。
DgSは新しい業態ではあるが、月刊MDも今年で創刊20周年を迎えるので、草創期の頃に開店した店舗は優に20歳を超えている。20年も既存店を放置している企業は少ないが、それでもかつて大量出店した店舗年齢の古い既存店が急速に増えているはずだ。5年とは言わないまでも、せめて全店の店舗年齢を10年以内に維持したいものである。
先月号のコンビニの特集でも、コンビニは新規出店投資よりも既存店の改装投資の方が増えているという記述があった。DgSも同様である。
計画的な改装投資をしない理由は、償却の終わった古い店舗は、競争力がなく売上も微減傾向にあるが、営業利益が出ているからだ。
古い既存店は儲かっていることが多く、改装投資をすると赤字に転落し、3~5年後まで投資が回収できないため、改装をためらう経営者が多いのである。
これは、かつて何度も見た小売業の「失敗の光景」である。冒頭に述べたDgSも決算書上は営業利益がきちんと出ているのだが、実態は競争力のない古い店舗に依存する危険な経営であることがわかる。
しかも、償却の終わった古い既存店は、そのチェーンの「ドル箱」店舗であることが多い。かつてローカルエリアでドミナント展開していた某ホームセンター(HC)企業は、20店舗全店で稼ぐ営業利益高の半分近くを、わずか3店舗のドル箱の既存店で稼いでいた。
しかし、儲かっていたから改装投資をためらったため、ドミナント(金城湯池)に、売場面積や品揃えなどのすべての面で競争力のある競合店に、ドル箱店舗の売上を一挙に奪われた。
このように、古い既存店を放置するという「失敗」は、業態を問わず、過去に何度も目撃した光景である。
ブランドは磨き続けねば
輝きを失ってしまう
企業は「現場主義」でなくなることによってダメになる。現場に投資し続けない企業は顧客満足度が低下し、競争力を失う。
メーカーの現場は…