顧客接点(接客など)は有人化を残す 単純作業は省人化・省力化を進める

アマゾンは「信者」を増やすために
ホールフーズを買収した

 今年の5月中旬から、アマゾンのプライム会員がホールフーズで買物をする際に、数百種類のセール品の価格が、さらに10%割引になる特典の提供を開始した。一気に店舗数を拡大し、2018年6月中旬には総店舗数480店舗の大半を占めるアメリカ国内の店舗で10%割引の特典を受けられるようになった。
 また、アマゾンで注文した商品を最短1時間以内で配達するプライム会員向けサービス「Prime Now」の対象商品に、ホールフーズの商品を加えた。さらに、Prime Nowの利用客も、ホールフーズの店舗で購入するのと同じ10%割引の特典を受けられるようになった。
 日本のプライム会員の年会費3,900円と比べると、アメリカのプライム年会費は119ドルと、日本の2倍以上もする(今年に入って従来の99ドルからさらに値上げした)。年会費は高くても、「Prime Now」(最短1時間の配送サービス)、「Prime Music」(音楽聞き放題のサービス)、「Prime Video」(映像ストリーミングサービス)などのプライム会員特典を考えると、119ドルの年会費を支払ってもお釣りが来ると考えるアメリカの消費者が多く、プライム会員は増え続けており、世界で1億人を突破した。
 アマゾンは、ホールフーズのようなリアル店舗への参入が目的というよりも、プライム会員の特典を増やす(年119ドル支払ってもいいと思わせる)ために、ホールフーズでの10%割引を始めたようだ。「オーガニック商品の品揃えは素晴らしいが、値段が高い」といわれ続けてきたホールフーズの商品を、低価格で購入できる特典は、アマゾンプライム会員の「固定化」と「新規会員獲得」に大きく貢献すると思われる。
 「アマゾンプライムの信者」を増やすための布教活動の一環が、ホールフーズの買収といってもいいと思う。しかも、「119ドルの年会費がアマゾンの利益」、さらに「AWS(アマゾンウェブサービス)のような物販以外の事業で莫大な収益」を上げていることを考えると、アマゾンは、リアル店舗の利益はゼロでもよいと考えている。
 アマゾン教の信者が増加していくと、原価80円で仕入れた商品を20円の利益を乗せて100円の売価で販売するという、従来の商売のやり方が根底から崩れていく。「店舗は利益ゼロでもいい」というアマゾンに、小売業は価格では太刀打ちできなくなるだろう。「アマゾンでは手に入らない価値」を提供すること以外、リアル小売業が生き残る道はないと思う。

顧客接点である売場は
買物体験の質を高める

 つまり、リアル小売業すべてに共通する経営テーマは、「アマゾンといかに差別化するか」である。アマゾンには存在しない、リアル店舗に行く価値とは何だろうか?
 第1は、…(続きは本誌をご覧ください