今月は毎年恒例のDgS(ドラッグストア)白書である。第1回目の白書を掲載した当時は、売上高ランキングは上位50社を掲載していたが、その後、M&Aなどで企業数が減少、寡占化が進み、現在は売上高上位30社を掲載している。
売上高5,000億円を超えている企業は5社で、その総売上は3兆円を突破した。上位5社の売上高(約3兆円)は、SM(スーパーマーケット)企業の上位5社の売上高を凌駕しており、SMを超える「生活ストア」として日本人の暮らしに定着していることがわかる。
GMS(総合スーパー)、HC(ホームセンター)などが成長した後に、もっとも最後に登場した「総合業態」であるDgSが、この20年間で急成長した最大の理由は何だったのだろうか?
小商圏のドミナント出店で
大商圏業態からシェアを奪う
DgSが成長した第1の理由は、「小商圏のドミナント(高密度)出店」である。DgSが登場した当時は、CVS(コンビニ)を除く業態は、「大商圏主義」であった。
たとえば、GMSのダイエーやイトーヨーカ堂の繁盛店は、「1店舗年商100億円」を超える店舗が何店舗もあった。当時のGMSは、広域商圏から集客することで大きな売上をつくる大商圏業態だった。
DgSは、GMSやHCよりは売場面積は小さかったが(当初は150坪から250坪程度)、小商圏でドミナント(高密度)出店することで、面で商圏を押さえる出店戦略で成長した。
GMSよりも売場面積は小さくても、「近くて便利」が消費者ニーズとしては最強であり、大商圏業態のGMSの売上を、薄皮をはがすように奪っていった。
現在年商5,000億円を超えている某DgS企業が初期の頃に、3万人の市に300坪DgSを出店し、繁盛したが、すぐに同じ市内に2号店を開店した。不思議なことに2店とも繁盛したが、その企業はさらにもう1店を同市内に開店した。これで終わりかと思ったら、さらに4店目を開店した。このようにDgS企業は、意図的に「自社競合」を起こしながら、高密度のドミナント出店を行ったわけである。
1店当たりの売上はGMSよりも小さいが、面(店舗網)で抑えた商勢圏の市場占拠率(シェア率)は、大商圏業態のGMSよりもはるかに高くなっていった。
DgS成長の第2の理由は、DgSの主力であるHBC(ヘルス&ビューティケア)の市場が大きく拡大したことである。人口減少によって「食べる量」は減るが、人間の根源的な欲求である「健康でいたい」「美しくありたい」という欲求を満たす市場は、1990年代後半から大きく成長した。
とくに「パーソナルケア」と呼ばれる消費者の個別の欲求を満たす市場が大きく成長したことも、DgSにとっては追い風になった。たとえば、1980年代には棚2本程度しか売場面積のなかった「ヘアケア」の売場は、現在は最大で棚14本程度まで拡大している。品目数が大きく増えた理由は、「ダメージケア」「ノンシリコン」「ボリュームアップ」「ボタニカル」といった消費者のパーソナルな欲求を満たすセグメントが増えたからである。
売上至上主義から脱却し
ROA主義で安定成長した
月刊MDを創刊した年は1997年である。その年は、日本の小売業の総売上が約147兆円とピークを迎えた年である。その後、小売業の総売上は減少を続けており、最新の商業統計では約127兆円。この20年間で約15%も売上が減少したことになる。
つまり、…(続きは本誌をご覧ください)