「企業文化づくり」に始まり 「企業文化づくり」に終わる

行動が変わることで
企業文化は強くなる

 企業経営は、「企業文化づくり」に始まり、「企業文化づくり」に終わると言われている。企業文化の強さが、その企業の真の競争力であるといっても過言ではない。
 企業文化の強さがもっとも試される時は、天災などの予想外の出来事が発生したときである。今年は不幸にも、「西日本大豪雨」「北海道胆振東部地震」と立て続けに天災に見舞われた(被災者の皆様には誌面を借りて、深くお見舞い申し上げます)。
 企業文化とは、その企業の「経営理念」や「経営哲学」が、単なるお題目ではなくて、その企業に属する社員全員の意識に深く浸透し、それが全員の「行動」の変化に結びついた状態のことをいう。
 すべての企業は、「顧客第一主義」「店は客のためにある」などの素晴らしい経営理念を掲げている。しかし、経営理念は素晴らしくても、現場社員の行動は、客のことなどまるで考えていない組織はたくさんある。企業文化の強さは、組織に属する全員の「行動」が変化したときに初めて、達成できるものである。
 そのためには、経営理念を具現化する「行動改革」を何度も何度も繰り返し教育し、こういう状況のときには、こういう行動をとるべきだということを全員が共有化できるまで徹底することが大切である。
 災害時に、本部と連絡の取れない非常事態でも、現場の判断で正しい行動を選択できる「強い企業文化」をつくった組織が、最終的に競争優位に立つことができる(図表1)。
zuhyo01_201811 先日の「北海道胆振東部地震」の際にも、停電でほとんどのコンビニが閉店している中、ツルハドラッグの某店舗が現場の判断で、停電のまま部分営業で店を開けて、現地の人から「こんな時に店を開けてくれてありがとう」と、とても感謝されているという現地情報を聞いた。
 「災害時には一刻も早く店を開ける」という企業文化が現場に定着していることがわかる。と同時に、小売業はまさに地域の暮らしを守るライフラインであると実感できる。
 また、前月号で取材した水害時の「くすりのレデイ東大洲店」(四国)の現場対応に関して、「レデイ薬局では企業文化の定着に一定程度成功していると実感しました。これは、不幸なできごとからの大きな収穫だったと思います」と経営幹部が感想を述べていたのが印象深かった。
 これからの時代は、店があるだけでは競争には勝てない。最大の競争対策は、強い企業文化づくりである。
 すべての社員・パートタイマーが、その企業の経営理念を具現化するための行動を取れるようになることで、組織は強くなり、店に魂が宿る。

企業文化が崩れると
企業経営は崩壊の危機に

 しかし、強固と思われた企業文化も、あっという間に崩れることがある。本誌12月号で毎年掲載している「顧客満足度調査」の途中経過を参照していると、数年前までは顧客満足度上位の常連企業だった某DgS(ドラッグストア)の現場が崩壊している実態が浮き彫りになって驚いている。
 昨年までは、1企業5店舗の調査だったが、今回は全国500店の調査なので、1企業当たりの調査店舗数は10店以上となっており、「たまたま調査した店舗がひどかった」という言い訳は通用しない。
 顧客満足度を大きく低下させたDgS企業は、…(続きは本誌をご覧ください