労働人口の減少で
生産性革命は待ったなし
今月の特集は、小売・流通業の「生産性向上」である。労働人口の減少によって、小売・流通・サービス業の現場の深刻な人手不足は今後も続く。現在でも、小売・流通業の現場では、「人が集まらない」「採用コストが増加している」「定着率の低さに悩んでいる」という、悲鳴にも似た声が聞こえてくる。
人手不足の影響は、人件費の上昇、引いては販管費の上昇を招いている。本誌2018年10月号の『DgS(ドラッグストア)白書』によれば、上場DgS14社の平均の販管費率が、2016年21.2%が、2018年は21.7%と0.5ポイントも上昇している。上場14社のうち、Genky、キリン堂、マツモトキヨシ以外の11社は、すべて前年よりも販管費率が上昇している。
労働集約産業である小売・流通・サービス業の「生産性革命」は、今年以降のもっとも重要な経営課題であることがわかる。
しかし、生産性の向上だけを目的に、顧客接点である売場の無人化を進めすぎると、リアル店舗である意味がなくなってしまう。今月号のインタビューの中で、ココカラファインの塚本社長が、「おもてなしスマートストア」と、あえて「おもてなし」という言葉を加えた理由は、ITを活用した生産性の向上と、接客などのリアルな「買物体験の質の向上」を両立させようという意図であることがわかる。これからのリアル店舗の生産性向上は、アマゾン対策としても、顧客との接点は人間が丁寧に保ちながら、接客を強化する必要がある。一方、顧客接点以外の単純作業は、徹底的に省人化・無人化を進めるべきである(26ページのパルタックの記事参照)。顧客接点は有人化、それ以外は無人化の二面作戦が、これからの小売・流通業の生産性向上のロードマップである。
ESとCSの向上は
車の両輪である
本誌で何度も繰り返しているが、CS(顧客満足)とES(従業員満足)は車の両輪である。CSを高めるためには、ESを向上することが不可欠の条件になる。ESが低い店が、不思議とCSだけが高いということはあり得ない。ESが低い店員は、おもてなしの配慮もなく、来店客に関心を払わないので、当然、CSも低くなる。
小売・流通・サービス業におけるESの向上とは、従業員に「この会社・お店で働き続けたい」と思われることである。ESが低くて短期離職が絶えず、常に人手が足りない店や、やる気の無い従業員がダラダラと働く店では、陳列・クリンリネス・接客・レジ対応など、あらゆる面で目にみえるほころびが出る。
一方、従業員がやりがいを持って働いている店は、採用コストが抑えられるだけでなく、業務への習熟による生産性の向上にもつながる。ESの向上は、生産性の向上にも大きな影響を与える。ES向上→CS向上→生産性向上の良いサイクルをつくることが重要である(図表1)。
作業改善、マニュアル化は
ESの向上に大きく寄与する
一方、生産性の向上のために、作業改善、作業の省力化を進めることが、……(続きは本誌をご覧ください)