「現場」と「数値」の両方がわかる 経営感覚のある「店長」を目指そう

店内作業を習得することが
店長教育の出発点

 今月号の特集は、恒例の「店長特集」である。店長に必要な資質は、「現場のリアリティ」と、「数値に基づいて判断できる能力」の両方を持つことである。経験と勘によってのみ判断し、数値を軽視してはならない。一方、現場のリアリティを無視して、数値だけで判断してもならない。
 たとえば、「在庫を減らせ」と本部から指示が来ると、現場では売れ筋の発注をしなくなる。売れ筋の発注抑制が、もっとも手っ取り早い在庫削減策であるという現場のリアリティを理解した上で、数値に基づいた在庫調整を行えるスキルが店長には求められる。
 以前聞いた話ではあるが、セブン−イレブン本部の新入社員は、加盟店の棚卸作業を経験することからキャリアをスタートするという。実地棚卸を何度も行うことで、商品のことを覚え、どんな商品が売れ筋であるか、売れ筋の欠品はどの程度あるか、売れ筋の陳列面積は適正か、死に筋が売場のどのくらいの面積を占有しているか、などの現場のリアリティを身をもって理解することができる。
 20代の店長候補者は、棚卸作業を含めた「店内作業」を完璧に習得することからキャリアをスタートすべきである。店長のもっとも重要な職務のひとつは、OJT教育(自ら手本を示して部下に作業を教えること)によって店内作業の水準を底上げし、人によるバラツキを少なくすることである。
 つまり、店長やSVは、誰よりも店内作業を早く完璧にこなすスキルが求められる。そのためには、新しいレジ作業や、新しい発注の仕組み、新しい売場管理など、日々更新される新しい店内作業を習得する努力を怠ってはならないと思う。
 こうした現場のリアリティを体得しながら、数値で判断できる能力を持った人材が、企業の屋台骨を支える「経営管理者」になることができる。
 今回の店長特集では、「売場の数値の見方」に関してもページ数を割いているので、店長教育のツールとして活用いただければ幸いである。

店内作業の実行と徹底が
店長の最大の職務

 多店舗展開するチェーンストアの組織は、大きくは「商品部」と「店舗運営部」に分けることができる。商品部や販促部がMD(マーチャンダイジング)の計画部隊であるのに対して、店長やSV(企業によってはエリアマネジャー)が属する「店舗運営部」は、MDの実行部隊である。
 多店舗展開するチェーンストアは、企画や計画も重要であるが、……(続きは本誌をご覧ください