問屋無用論は
机上の空論だった
1960年代に大量生産、大量消費の時代が始まり、「流通革命」というムーブメントが起こった。そして、流通の川下だった「小売業のチェーンストア化」が始まった。
その頃、東大の教授だった林修二氏による「問屋無用論」という学説が唱えられた。流通の川下で、かつ消費者との接点にある小売業がチェーンストア化、大規模化すると、いずれ卸売業(問屋)の機能を小売業が自分たちで持つようになるから、現在の卸売業はなくなってしまうだろう、という学説だった。
事実、日本の小売・流通業がお手本にしたアメリカの大規模チェーンストアは、卸売業の中核機能である「物流機能」を小売業自身が持っており、いわゆる日本的な総合問屋はほとんど存在していなかった。
現在のアメリカ卸売業の機能はさらに細分化されている。
たとえば、図表1の「メーカー営業・商談代行機能」に特化した会社は「ブローカー」と呼ばれている。また、「マーチャンダイジング機能」の中で、プライベートブランド開発を専門に行う会社も存在する。
さらに、品目数が多くて、商品入れ替えの頻度の多い、つまり、売場管理が大変なカテゴリーを小売業に任されてマネジメントする「カテゴリーベンダー」(売場貸し)という機能も存在する。
しかし、問屋無用論から60年以上が経過しているが、日本の卸売業は独自の進化を遂げて生き残っている。今回トップインタビューで掲載した卸売業は、日本の流通業にとっては、なくてはならない企業として存在している。
もちろん、この60年間で卸売業の企業数は大幅に減少している。今回誌面で取り上げた卸売企業も、合併を繰り返しながら成長し、今に至っている。しかし、60年が過ぎても、卸売業はなくならなかった。「問屋無用論」は机上の空論だったと歴史に証明されたわけだ。
昔の「商人」とは
卸売業者のことだった
私は小売業のチェーンストア化が加速していた時代に、小売業の専門記者としてのキャリアをスタートした。…(続きは本誌をご覧ください)