ブランディングこそが 真の差別化戦略である

4年間で1%も上昇した
14社平均の販管費率

 図表1は、上場ドラッグストア(DgS)14社の「販管費率」(売上に占める経費の割合)の過去4年間の推移である。2019年は14社すべての販管費率が前年よりも増えて、14社平均の販管費率は、21.7%→22.2%と0.5%も増加している。2016年と比較すると、21.2%→22.2%と、4年間で1%も販管費率が増加している。販管費率の上昇は、小売業の最大の経営課題であるといっていい。
 最大の原因は、人手不足による人件費の上昇である。人材確保のためにパートタイマーの時給が上昇しており、新人のパートタイマーの時給が古参のパートタイマーよりも高くなる逆転現象が起きている。人材流出を防ぐためには、古参パートの時給も上げる必要があり、人件費の上昇が加速している。
 また、働き方改革の影響により、福利厚生も含めた人件費の上昇は、これからも続くとみられる。また、給料を高くすることで、社員・パートの従業員満足を向上させ、定着率を高めることが、これからの企業の成長戦略として重要だと主張する理論が、最近は脚光を浴びている。
 高い人件費を維持しながら収益性を高め、継続的に成長していくためには、小売業の「生産性」を高めることが不可欠である(図表2)。日本の小売業の生産性は、アメリカの小売業の2分の1程度と低く、生産性向上の伸びしろは非常に大きいと前向きに考えたいものである。
 生産性向上の方向性は2つある。ひとつがコスト(とくに人時数)を減らすことである。とはいえ、現代は単純な人減らしをすると、不完全作業の横行、接客力の低下によって顧客満足(CS)が低下し、人件費減→売上減→さらなる人件費削減という悪魔のサイクルに突入する恐れがあるので注意が必要である。
 新しいテクノロジーを使って、CSを維持しながら省力化・省人化を進める「スマートストア化」への取組みが求められる。店内作業の中で人時がかかっている作業は、「商品に触る作業」である。補充作業、陳列作業は多くの人時を使うために、いかに商品に触る回数を減らすかが、人時数削減のポイントになる。
 その中でももっとも人時のかかっている作業は「レジ作業」であり、店内作業人時の約30%を占めている。買上点数の多い食品スーパーでは、本誌でも紹介したトライアルの「スキャンカート」のようなレジ作業の省人化・省力化に挑戦する企業も増えている。
 レジ作業の省人化・無人化の方向性の第1は、Amazon Goのような「ウォークスルー方式」である。アマゾンは店内カメラと棚の重量センサーを活用して、買物行動を補足し、レジの存在しない店舗をアメリカで展開している。
 方向性の第2は、「スキャン&ゴー方式」。お客が自分で商品のバーコードをスキャンしながら買物し、最後に一括精算する方式である。
 食品スーパーのヨークベニマルも今年の8月から「スキャンカート」の実験を開始していた(写真1参照)。実験店のレジ台数は10台で、その内訳はセルフレジが6台、スキャンカート専用レジが1台、有人レジは3台だった。つまり10台中7台は、お客が自分で商品をスキャンして精算するレジである。食品スーパー業界では、レジ作業の省人化・無人化は着実に進んでいる。

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 一方、DgSのような業態の場合、「キャッシュレス」や「クーポン一括精算」などの仕組み化でレジ作業を減らすことは重要であるが、…(続きは本誌をご覧ください