販売・顧客データと紐づいた 「店頭メディア化」が進む

地上波のCMの影響力が
大きく低下している

 消費者との接点である「店頭をメディア化すべき」という主張は、10年以上前からの本誌の一貫した提言である。商品・ブランドを育成するマーケティングの主戦場として、リアル店舗が大きく注目されるようになった。店内カメラ、携帯の位置情報取得技術、サイネージの低コスト化などデジタル技術の発達と普及によって、店頭メディア化の機は熟したと思う。
 テレビなどのオールドメディアの影響力低下も、店頭のメディア化に拍車をかけるだろう。
 従来のメーカー、小売企業にとって「売れ筋」を育成するための最大のメディアはテレビ広告だった。メーカーの営業マンと小売業のバイヤーとの商談の際には、「この新製品は〇〇GRPのテレビ広告を入れますからぜひ採用してください」(メーカーの営業マン)、「そんなにテレビCMを入れるなら間違いなく売れるからぜひ販売しましょう」(小売業のバイヤー)という会話が日常茶飯事だった。小売業のバイヤーが商品を仕入れる唯一の目安が「テレビ広告出稿量」だったといってもいい。
 しかし、地上波のテレビCMの影響力は年々低下している。その象徴的な出来事が、地上波で放映せず、YouTube配信のみにした「アースモンダミンカップ」のゴルフ中継である。例年、テレビ朝日で独占放映していたのだが、今年はYouTubeの4チャンネルに限定した動画のライブ配信だった。
 今年はコロナで無観客試合であること、地上波の放映権料が高いこと、テレビクルーの人数が多すぎて感染リスクが高いことなど、さまざまな理由があったと思うが、大きな決断であったと思う。
 結果的には、ゴルフファンの評判はすこぶるよかった。従来の地上波のゴルフ中継は、試合が終了した後の録画中継である。
 以前は、情報を遮断していたので録画でも視聴者は結果がわからなかったが、現在は現地で観戦している観客がTwitterで拡散すれば、試合前に当然のように結果がわかる。
「結果をいうなよ」というゴルフファンの嘆きを聞いたことは一度や二度ではない。
 しかし、今回のYouTubeのライブ配信は生中継だったので、ゴルフファンの評判はよかった。さらに、4チャンネルにすることで、スタートホールや注目ホールだけを放映したり、インタビューだけを流すチャンネルもあり、視聴者のさまざまなニーズに対応していた。
 今後、地上波テレビの影響力はさらに低下し、インターネット、SNS、店頭などのさまざまなメディアの中のワンオブゼムになるだろう。アースモンダミンカップのYouTube限定配信は、時代の最先端を行く大英断であったと思う。

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