「店舗」は小売業のブランド 磨き続けなければ陳腐化する

第3次成長期に伸びたDgSは
「店舗年齢」が若いことが共通点

 ドラッグストア(DgS)が業態として大きく成長した時期は、大きく3つの時代に分けることができる。第1次成長期は、1980年代末から1998年頃である。1987年(昭和62年)7月に開店した都市型ドラッグストア「マツモトキヨシ上野アメ横店」(1階14坪、2階12坪)の爆発的なヒットが、「ドラッグストア」という業態名を日本人に定着させたといってもいい。
 また、郊外立地では大店法の規制にかからない「売場面積150坪以下のDgS」が全国で続々と開店した時期である。
 第2次成長期は、大店法が廃止された1999年から2008年頃である。大店法規制下で成長した150坪型DgSが競争力を失い、250~300坪型の大型DgSの業態開発が進んだ時期である。そして、第3次成長期は、平成時代の最後の10年間である2009年から2020年までの期間である。
 図表1は、主要なDgS企業の2009年決算期と2020年決算期の売上高を比較し、この11年間で売上高を何倍に増やしたかを示したものだ。この11年間で売上高を大きく増やした企業が「クスリのアオキ(6.1倍)」「ウエルシアHD(4.4倍)」「コスモス薬品(3.9倍)」「ツルハHD(3.3倍)」である。
 DgSの「第3次成長期」に大きく成長したDgS企業の共通点は、「店舗年齢を若く維持した」ことである。チェーンストアにとって店舗はもっとも重要な「ブランド」であり、ブランドは常に磨き続けなければならない。メーカーが「リ・ブランディング」することで、ブランドの価値を高め続けることと同じである。
 小売業の場合は、計画的に店舗年齢の古い既存店の「スクラップ&ビルド」を繰り返し、「店舗年齢」を若く保つことがリ・ブランディングである。店舗年齢は、古い既存店を「全面改装」もしくは「移転増床」した時点で「ゼロ歳(年)」に戻る。チェーンストアの場合は、店舗年齢を5年(歳)に維持することが原則といわれている。
 10年ほど前、アメリカのDgS「ウォルグリーン」の店舗数が3,000店舗前後の時代に、ウォルグリーンのシカゴ本社で「平均の店舗年齢は何年ですか?」と質問したところ、「5年です」と即座に回答したことを鮮明に覚えている。
 第3次成長期に飛躍した「ツルハHD」と「ウエルシアHD」は、M&A・合併によって急成長したと思われているが、M&Aと同時に既存店の改装に積極的に投資したことが共通点である。
 ツルハHDは、M&Aした企業の既存店のスクラップ&ビルドに投資することで、グループ企業の店舗年齢を若くし、既存店の業績を改善することを重視した。約3年前に、当時の社長の「堀川政司」氏にツルハグループの店舗年齢を聞いたところ、「6.6年」という回答があった。すでにグループで2,000店を突破した時期にもかかわらず、店舗年齢を若く維持しているのは凄いと思ったものである。
 ツルハHDは、第3次成長期の期間、毎年100店近く新規出店していると同時に、毎年コンスタントに30店程度閉店しており、スクラップ&ビルドと新規出店(M&A含む)の両面で開発予算を立てていることがわかる。
 ウエルシアHDも、合併企業の店舗を「ウエルシアモデル」(調剤併設、深夜営業、カウンセリング、介護)と呼ばれる業態に店舗改装することで、合併先の店舗の既存店の業績を改善させている。
 単にM&Aで店舗数と売上高が増えたのではなくて、店舗改装によって既存店の競争力を高めたことが、第3次成長期に躍進したウエルシアHDとツルハHDの共通点であると思う。積極的に既存店を改装することによって、店舗年齢の古い既存店の割合を減少させているわけだ。

店舗年齢の若い
直営出店にこだわる

 また、コスモス薬品、クスリのアオキ、ゲンキーなどのM&Aに頼らず直営で店舗数を増やしてきた企業の店舗年齢も若い。コスモス薬品の代表取締役社長の横山英昭氏は、決算発表のときに「われわれは……続きは本誌をご覧ください