年1,000店の出店続ける
ダラー・ジェネラル
今月の特集で紹介した食品強化型ドラッグストア(DgS)「ゲンキー」のように、人口が減少し、高齢化率が上昇する地方都市の「過疎地」立地に敢えて出店する経営戦略が注目されている。
小売業は「立地産業」と呼ばれ、人口の増加している地域に出店するのがセオリーである。しかし、あえて人口5,000~7,000人の人口減少立地に「逆張り出店」することで、残存者利益を獲得し、需要を総取りする作戦である。
アメリカでもルーラル(田舎)立地に高密度でドミナント出店し、大量出店を継続しているチェーンストアがあるので、アメリカの田舎立地に出店する業態について解説する。
その前に、最近のアメリカ小売業の3つのトレンドについて説明する。第1は、大型ショッピングモールの大量閉店である。近年、ショッピングモールに入居している核店舗のデパートやGMSの閉店が相次いだ。さらにコロナ禍の中で、ショッピングモールにテナント出店するアパレルなどの専門店の倒産も続出した。
第2は、世界最大の小売業「ウォルマート」や大手ホームセンターの「ホームデポ」のように新規出店をほとんどしないで、デジタルシフトによって売上を増やしているグループである。この2社は、「オンライン」と「リアル」の買物体験を融合し、既存店の売上高を増やしている。たとえば、「オンラインで注文し店舗受け取り」「オンラインで注文して宅配」「在庫のない商品のお取り寄せ」などの新しい買物体験を提供することで、店舗数は増えなくても売上高を増やしている。
第3は、大量出店を継続している「小型の小商圏業態」である。代表的な企業は「ダラー・ジェネラル」「アルディ」である。両社とも人口の少ない立地に出店できる売場面積300坪程度の「小商圏小型ディスカウンター」である。ダラー・ジェネラルは、ほとんどの商品が10ドル以下で売られ、2020年1月末で全米45州に16,278店舗を展開。アメリカは50州なので、まだ出店していないエリアが残っており、アメリカでもっとも成長余地の大きいリアル小売企業として注目されている。
ダラー・ジェネラルの店舗の多くは、大型店が少ない人口1万人以下の郊外やルーラル(田舎)地域に展開されている。今期、1万6,000店目の開店を含み975ヵ所の新規開店、1,024店舗を改装、100ヵ所の店舗を移転した。これら店舗網で全米45州をカバー、人口の75%以上が店舗から半径5マイル(約8㎞)以内に住んでいる小商圏店舗である。
ダラー・ジェネラルのような業態の大きな特徴は……続きは本誌をご覧ください