小売業の顧客満足対策の
第1が「徹底力」である
今月号の特集は、恒例の「ドラッグストア顧客満足度調査」である。今年も37社500店舗のドラッグストア(DgS)をミステリーショッパーが調査した。企業規模にもよるが、1社で9店~21店の複数店舗を調査している。毎年順位を決めるので、読者の関心がものすごく高い企画であるが、ランキングを付けることを目的とはしていないことをお断りしておく。
「顧客満足度調査」の目的は、多店舗展開する小売業にとっての最大の経営課題である「徹底力と標準化」の重要性を改めて啓蒙するためである。決められたことが全店で完全作業できる「徹底力」と、店と人によるバラツキの少ない状態である「標準化」の2つのレベルを可視化することが目的である。「徹底力と標準化」は、チェーンストアにとっての最大の経営課題であると同時に、最大の「顧客満足対策」であると本誌は考えている。
チェーンストアは、店舗数が増えれば増えるほど、1店1店の店舗現場の「完全作業力」と「徹底力」が、もっとも優先順位の高い「売上対策」「利益対策」になる。チェーンストアは、「小さな改善×店舗数×365日」によって、店数が多ければ多いほど、小さな改善が大きな成果に直結するビジネスモデルだからである。
たとえば、季節商品売場の早期展開の徹底力が高まり、「シーズンファーストバイ」(その季節の第1回目の売上高)をきちんと獲得したことで、1店舗1日500円×60日=3万円の季節商品の売上の機会損失を防いだとする。30店チェーンであれば、3万円×30店=90万円の売上増である。しかし、1,000店チェーンであれば、3万円×1,000店=3,000万円もの機会損失を防いだことに直結する。
コスト削減も同様。店内作業を仕組み化し、1店舗1日5人時の作業削減に成功したとする。1,000店チェーンであれば、5人時×365日×1,000店舗=182万5,000人時ものコストを下げられる。時給1,000円で計算すると、年間で18億2,500万円ものコスト削減効果がある。
つまりチェーンストアは、店数が増えれば増えるほど、小さく考えることが大切になる。過去10年で店舗数が何倍にも増えたDgSにとって、徹底力の向上は最大の経営課題のひとつである。世界最大の小売業である「ウォルマート」は、「Think Small」という言葉を使って、規模が大きくなればなるほど小さく考えることの重要性を伝えている。
小売業の顧客満足対策の
第2が「標準化」である
また、チェーンストアは、「標準化」することで、人による「バラツキ」をなくし、どの店に行っても、一定の範囲で「均質化」された良質なサービスを受けられる仕組みである。
「マニュアル化」と「OJTによる教育訓練」は、コスト削減が目的ではなくて、標準化による顧客満足の最大化が目的である。一人で10~15店を管理するSV(スーパーバイザー)やBSV(ビューティスーパーバイザー)のもっとも重要な役割は、自分が担当する店舗のバラツキを減らすことである。
そのためには……続きは本誌をご覧ください