「浮動客」から「固定客」との
長期的な信頼関係づくりへ
図表1は、「購買行動」のパラダイムシフト(大きな変化)を過去と未来で比較したものである。まず次の10年の日本は、本格的な「人口減少&高齢化時代」に突入する。
消費者の購買行動の第1の変化は、「遠くから来店しない」「近くの店を好む」ということである。Amazonでなんでも購入できる時代のリアル小売業は、よほど差別化されたオリジナル商品とサーピスを提供する店以外は、広域集客よりも「狭小商圏高シェア」が重視されるようになる。
ドラッグストア(DgS)の商圏人口はすでに1店舗1万人を切っており、今後は7,000~5,000人の極小商圏への出店も始まるだろう。「近くて便利」「親切で接客がいい」というリアル店舗の価値を磨いて、狭小商圏で成立するリアル店舗をつくっていくことが、次の10年のもっとも重要な経営課題である。
狭小商圏化が進むと、バーゲンハンターのような顔の見えない「浮動客」をかき集めるような売り方ではなくて、狭小商圏に住む「固定客」に長期的に信頼される売り方が重要視される。つまり、「一元(いちげん)客相手」の商売ではなくて、固定客の「LTV(ライフタイムバリュー。生涯価値)」を高める長期的な商売への転換が求められる。
また、働く女性が大多数を占める時代は、「短期特価特売(ハイ&ロー)」は不公平な販促になる。働く
女性は、特売日に仕事があれば店に行けないからだ。「いつでもお買い得」のEDLP(エブリデーロープライス)が支持されるようになる。
ちなみに、「女性の労働率」は2015年の調査で、子育て世代(35~39歳)が72.4%、40~54歳の世代は75~78%と高い。5年前の調査でも、専業主婦よりも「働く女性」、つまり「共働き世帯」が大多数になっている。この傾向はさらに加速するだろう。
「商品軸」「ブランド軸」から
「顧客軸」のMDに転換
つまり、これからのリアル小売業のMD(マーチャンダイジング)は、「商品軸のMD」から「顧客軸のMD」へ転換することがますます重要になる(図表1)。そのためには……続きは本誌をご覧ください