ドラッグストア30年の歴史を 未来の「中堅幹部」に継承しよう!!

オーバーストア時代に
大成長したドラッグストア

 2月10日に『ドラッグストア拡大史』(日野眞克著・発行イースト・プレス)というドラッグストア(DgS)の歴史をまとめた書籍を発行した。書店やAmazonでも購入できる一般書である。この本は、1980年代の後半から1990年代の前半に始まったDgSの30年程度の成長史を、筆者なりになるべく客観的にまとめたつもりである。
 DgSの成長史は、以下の3つの時代に分けることができる。第1次成長期は1980年代末期から1990年代後期にかけてである。第2次成長期は1990年代末期から2000年代末期の10年間、第3次成長期は2009年から2020年までの11年間である。
 それぞれの時代にもっとも成長した企業の成功のエピソードを紹介すると同時に、第1次成長期に急成長したDgSが、なぜその後に衰退したのかといった「失敗の教訓」も紹介している。
 編集記者という仕事を生業(なりわい)にしている人間とは思えないほど人見知りで、業界団体の集まりにもほとんど参加しない筆者ではあるが、取材(フィールドワーク)と数値(データ)に基づいて、その時代にもっとも象徴的なエピソードを選んで編纂したつもりである。
 私が月刊『販売革新』の編集記者を辞めて独立して、月刊MDを創刊した年が1997年である。丁度、DgSの第2次成長期が始まる時期である。
 また、1997年は「山一証券」が経営破綻した年であり、平成バブルの真っただ中であった。
 DgSが奇跡的ともいえる大成長を果たした時期は、昭和時代の「店不足時代」「右肩上がり経済時代」ではなかった。まともな業態が存在していなかった戦後の高度経済成長時代に成長した「日本型GMS」「スーパーマーケット」、1980年代から急成長した「ホームセンター」「コンビニ」とは異なり、DgSが成長した時代は、全国津々浦々にさまざまな業態が店舗展開しており、すでに「オーバーストア」「右肩下がり」の時代であった。
 後発のDgSが成長する余地など残っていないように感じた人も多かった。事実、『販売革新』時代にDgSの取材を始めた頃、既に大企業に成長していた日本型GMSやホームセンターなどの大手小売業の人達は、DgSの急成長をほとんど評価していなかった。
 「ただの安売り屋に過ぎない」「いつかは成長が止まるだろう」—etc. しかしDgSは、他の業態が停滞していた時期に、奇跡的ともいえる大成長を遂げた。「なぜDgSだけが成長できたのか?」という理由は本書を読んでもらいたい。

ドラッグストアの歴史は
ラインロビングの歴史

 1997年の創刊以来25年目に突入した月刊MDは、「誰も知らない雑誌」からのスタートだった。出版社のいち編集者であった30代の人間が、個人で雑誌を創刊しても読者が集まるはずもなく、創刊当初はとにかくページ数を限界まで減らし、すべて白黒ページのローコスト経営で、しかも、まったく儲からなかった。意地で雑誌を発行し続けたようなものである。
 創刊2年目の頃に、「毎月3日ずつ発行日を遅らせれば年間で11冊しか発行しなくてすむ。多分誰も気付かないからやってみようか」と真剣に考えたこともあったが、実際には24年間一度も途切れることなく、発行日に雑誌を出し続けている。
 雑誌の知名度がないので、……続きは本誌をご覧ください