地域の顧客に長期的に寄り添う 正直な商売を継続しよう

(×)浮動客をかき集める
(○)固定客を増やす

 図表1は、ネット社会における「リアル小売業」のビフォーアフターをまとめたものである。第1の変化は、「狭小商圏化」が加速することである。
 車で30分もかけて来店するような大商圏のリアル店舗は、Amazonなどのeコマースとの競争に弱い。
 「コストコ」のようなAmazonにはない特別な来店目的を持つ業態以外は、大商圏立地の店舗は成立しにくくなる。
 Amazonと共存できるリアル店舗は、「近くて便利」という価値を磨いた狭小商圏店舗だけになる日が来るかもしれない。
 現在、ドラッグストア(DgS)の商圏人口は1万人を切っているが、引き続き大量出店を計画しているDgS企業は、人口7,000~5,000人という立地への出店も計画しはじめている。
 7,000~5,000人の狭小商圏立地でも商売が成立するためには「ラインロビング」が不可欠の戦である。
新しいカテゴリーを増やすことで「来店目的」を増やし、一人当たりの支出金額を増やすことが、狭小商圏で成立させるためのセオリーである。
 最近のDgSは、精肉、青果などの生鮮食品までラインロビングする事例が増えている。
 人口減少、Amazonとの競争の中で、近い将来、「商圏人口3,000人」時代が到来するかもしれない。
 第2の変化は、浮動客を広域からかき集めるような販促が廃れて、商圏内に住み、繰り返し来店してくれる「固定客」を増やすことが最重点の売上対策になることだ。
 これからのリアル店舗にとってもっとも重要視すべき数値は「年間購入金額」である。
 一般的に1店舗で1年間に6万円以上支出してくれる客をロイヤルカスタマー(固定客)と定義するが、狭小商圏内に住む年間購入金額の高い固定客を増やし、その店を信頼して通い続けてくれる「生涯顧客」を増やすことが、これからのリアル店舗にとってはもっとも重要な経営戦略に変わるだろう。
 第3 の変化は、開店前に行列をつくるような「短期特価特売(ハイ&ロー)」の売り方が廃れて、価格と「売れ方」の波動をつくらない「EDLP(毎日低価格)」の売り方が主流になることである。

狭小商圏の商売は
「正直な商売」であるべき

 狭小商圏時代に固定客に信頼される店づくりは、広域商圏時代の商売よりも難しい。広域商圏時代は、企業が儲かる商品を押し売りして、顧客を怒らせても、次から次に新規客が増えていた。
 しかし、限られた商圏の固定客の繰り返し来店で成立する商売は、……続きは本誌をご覧ください