商圏人口5,000人時代の リアル小売業の差別化戦略

「同質競争」から
「差別化」の時代へ

 コロナ禍の中、今月号ではドラッグストア(DgS)の激戦地である「石川県金沢地区」と「静岡県焼津地区」の店舗を視察してきた。実際に足で稼いで現場を歩くと、DgS同士の競争が激化しており、1店舗当たりの狭小商圏化が進行していて驚かされた。
 激戦の詳細は、本文を参照してもらいたいが、石川県のDgS1店当たりの商圏人口は4,238人(人口114万÷DgS269店)。静岡県焼津地区のDgS1店当たりの商圏人口は5,000人台と、この数年で一気に店舗数が
増加したことがわかる。
 2年程前は、DgS1店当たりの商圏人口が1万人を切って競争が激化していると言われていたが、地域によっては1万人の半分の5,000人程度まで狭小商圏化が進んでいるようだ。
 DgSに限らず、すべての小売業の狭小商圏化が進行している。こういう「レッドオーシャン」の戦いの中で地域の顧客に選んでもらうためには、「差別化(Specialization)」が何よりも重要である。
 看板を取り換えれば違いが分からない「同質競争」では、近くて便利しか武器がないので、必然的に商圏人口が減れば売上も減少する。競合店を乗り越えてでも来店したくなるような差別化された魅力を構築していく必要がある。
 チェーンストア経営の基本は、「3S主義」という言葉で表現される(図表1)。3S主義の3番目が差別化(Specialization)である。現在のDgSのように競争が激化した段階では、差別化が重要な競争戦略になる。
 チェーンストアの差別化は、「あることをさらに徹底し、競合よりも卓越し、勝っていくこと」と定義されている。
 つまり、奇をてらった売り方のアノ手コノ手が差別化ではない。あることを継続・徹底することで、他社が追随できない強みを確立することを差別化というわけである。
 リアル小売業の差別化は、(1)立地、(2)業態、(3)商品戦略、(4)接客、(5)仕組みの5項目が中心になる。これに加えて、次の10年のもっとも重要な差別化戦略は、(6)DX(デジタル・トランスフォーメーション)である。
 今月号から「経営幹部、営業担当のためのDX強化書」というシリーズを開始したので、ぜひ読んでもらいたい。DXの継続、徹底、高度化が、次の10年のリアル店舗の差別化戦略であることが理解してもらえるはずだ。

商品による差別化で
固定客を獲得・定着させる

 立地による差別化に関しては、……続きは本誌をご覧ください