調剤+DgS+食品(生鮮含む)の コンビネーションストアが登場!?

調剤はドラッグストア(DgS)よりも
狭小商圏である

 今月号の特集は、DgSの「調剤」市場攻略戦略の特集である。DgS企業が調剤を強化する理由は3つある。
 第1は、調剤市場が、DgS市場8兆円に匹敵する7.5~8兆円の巨大市場であるからだ。しかも、DgS市場8兆円の85%は大手17社で占められるほど寡占化しているのに対して、調剤市場7.5兆円は大手18社で20%程度のシェアであり、市場の余白が大きいことが第1の理由である。
 第2は、調剤がDgSの「専門性」強化のもっとも重要な事業であるからだ。DgSの調剤売上構成比は、上場企業の中ではスギHDが21.8%(2021年決算)ともっとも高い。
 今回インタビューした住友商事グループのDgS「トモズ」の調剤構成比は30%に達しており、DgSでは調剤構成比がもっとも高い企業のひとつである。近い将来、多くのDgSの調剤構成比が30%に近づくものと予想されている。調剤が、圧倒的な主力部門になるわけだ。
 第3の理由は、狭小商圏で成立するためである。調剤の商圏人口はDgSよりも狭くて少ない。今後、免許返納の高齢者が増えていけば、徒歩圏で行ける範囲の「調剤受取りドミナント」を構築する必要がある。DgSの多くが、「調剤薬局」と「調剤併設DgS」の2つのパターンで出店している理由は、DgSよりも調剤薬局の方が、商圏が小さいからだ。
 調剤市場の攻略を目指しているのはDgSだけではない。今月号で紹介した「サミットストア鳩ケ谷駅前店(食品スーパー+トモズの調剤薬局併設DgS)」のような調剤を取り込んだ食品スーパーも今後は増えていくだろう。
 今年から、食品スーパーの「オーケーストア」が自社で調剤に取り組むと、発表している。狭小商圏&固定客化対策として、調剤のラインロビングに取り組む食品スーパーが増えていく可能性がある。

コンビネーションストアの
第2次開発期が到来する

 一方、多くの大手DgSは、生鮮を含む食品のラインロビングに挑戦している。そうすると、「生鮮含む食品+非食品+DgS+調剤」を合体したコンビネーションストアの開発競争が始まるかも知れない。おそらくDgSと食品スーパーの両方から業態開発が進むだろう。
 しかし、業態開発の歴史を振り返ると日本型コンビネーションストアは、一度失敗している。その歴史を簡単に振り返ってみよう(以下は拙著・ドラッグストア拡大史より引用)。
 初期の薬局・薬店の経営者が参考にしたのが1970年代に隆盛を極めた「スーパードラッグストア」である。日本よりも先に車社会が到来したアメリカの郊外の住宅地から近い立地に「ネイバーフッドショッピングセンター(略称NSC。近隣型SCのこと)」が全米規模で大量に開発された時代である。
 当時のNSCの核店舗は、スーパーマーケット(SM)、バラエティストア、ドラッグストア(DgS)の3つが軒を並べるスタイルが一般的で、それにクリーニング、美容室、ファストフードなどのテナントが入居していた。つまり、自宅から一番近くに立地するSCであり、日常的な暮らしを支える商品とサービスをワンストップショッピングできるSCだった。
 NSCにSMと隣接してDgSを出店する方式は、1990年代前半の日本のDgSの出店では多く見られた。車で行く郊外立地のNSCに、イオンのSM「マックスバリュ」と「ツルハドラッグ」が隣接出店するような出店戦略である。これもアメリカの流通視察でNSCを見学した結果である。
 その後、アメリカではNSCの一角に立地したスーパードラッグストアの競争力が低下し、少しずつ業績が悪化していった。不振になった最大の理由は、……続きは本誌をご覧ください