固定客と新規客の獲得は
車の両輪である
リアル小売業の「狭小商圏化」が加速している。数年前に「ドラッグストア(DgS)の商圏人口が1 万人を切った」と話題になったこともあるが、最近は、立地によっては、DgS 1店当たりの商園人口が7,000人、5,000人を切るエリアも登場している。
このように限られた商圏人口の中で客数と売上を増やすための対策は、大きく分けて3つある。
第1は、固定客」との絆を強化することである。リアル小売業の売上高に占める固定客の売上比率は年々高まっている。ある調査によれば、DgS店舗に1年間に11回以上来店する固定客の売上に占める割合が約90%に達しているそうだ。
つまり、ほぼ毎月来店する固定客が、店の売上の9 割も占めているわけである。1年間に11回以上来店する固定客は、1年間の総来店人数の約50%であるといい、総来店客数の半分の人数の固定客で9 割の売上を稼いでいることになる。
また、同調査によると、1年間で40回以上来店するロイヤルカスタマー(人数構成比14%) が売上の約50%も稼いでいる。ECで何でも買える時代において、バーゲンハンターを広域集客しても、売上に対する貢献度はどんどん低下している。
つまり、これからのリアル小売業は、限られた商圏に住む固定客に信頼してもらい、その店の長期的なファンを増やすことが、もっとも重要な売上対策であることがわかる。
第2は、「新規客」の獲得である。固定客は、さまざまな理由で毎年何割かは必ず離脱する。固定客だけの商売では縮小均衡になってしまうので、必ず新規客の獲得にも取り組むべきである。
調査するとわかるが、自店の商圏内に住んでいる住人の中で、自店に一度も来店したことのない、もしくはほとんど来店したことのない人は相当数存在している。いずれにしても、固定客と新規客の獲得は、車の両輪であるといっていい。
第3は、「商圏を拡大」することである。たとえば、DgSが酒類を強化する理由の第1は、酒類の購入客は比較的広域から来店する可能性が高いからである。酒類は商圏拡大のための戦略部門といっていい。さらに酒類は、男性客の購人比率が高く、女性客の多いDgSにとっては、男性客を増やし、客層が広がるという意味の客数増に貢献してくれる。
また、化粧品のカウンセリング販売も、競合店を乗り越えて固定客を獲得する重要なサービスである。さらに、プライベートブランド(PB) や「専売品」は、自店だけが取り扱うオリジナル商品なので、競合店やAmazonを乗り越えて、広域から集客する戦略商品といえよう。
アプリとデジタルシフトは
固定客との絆を強くする道具
一般的にDgSでは1店舗1年間で6万円以上買物する人をロイヤルカスタマー(固定客)と呼ぶ。業態によって金額は異なるので、各社で定義を決めればいいと思う。
ただし、専門店志向の強い店ほど、ロイヤルカスタマーの依存率が高くなる傾向がある。たとえば、化粧品のカウンセリング販売の強いDgSでは、年間20万円以上の購入客をロイヤルカスタマーと定義している場合もある。
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