小売業・ドラッグストアの 2022年5つの重点経営課題

ショートタイムと
ワンストップの両立

 リアル小売業の「狭小商圏化」が加速している。数年前に「ドラッグストアの商圏人口が1万人を切った」と話題になったこともあったが、最近は、立地によっては、1店当たりの商圏人口が7,000人、5,000人を切るエリアも登場している。
 狭小商圏化が進む理由は、ドラッグストアの陣取り合戦が加速していることである。先日視察した茨城県水戸市では、ツルハドラッグの駐車場から、コスモス薬品とカワチ薬品の看板が目視できるほどの激戦だった(16ページ参照)。まさに「レッドオーシャン」の陣取り合戦の結果としての狭小商圏化である。
 狭小商圏化が進むもうひとつの理由は、Amazonで何でも購入できるようになり、しかもコロナ禍の影響も加わり、「遠くの混んだ店へは行きたくない」と考える消費者が増えているためである。つまり、リアル店舗の最大の価値は「近さ」になり、そのための狭小商圏化である。
 ある調査では、コロナ前はスーパーマーケットの来店者の約34%が30分以上滞在していたが、コロナ後は30分以上滞在する顧客が約23%と大きく減少している。一方、10分以内の滞在客が約5%から約9%と大きく増加しており、コロナによって消費者の「ショートタイムショッピング」のニーズは大きく高まっているといえよう。
 一方で、せっかく来店した近くの店で「短時間でまとめ買いしたい」というニーズも強まっている。つまり、「ワンストップショッピング」と「ショートタイムショッピング」の両立が、2022年の経営課題のひとつである。
 また、狭小商圏化による1店当たりの商圏人口の減少によって、「ラインロビング」がドラッグストアの重要な経営課題になっているが、2022年も引き続きラインロビングへの挑戦は進むだろう。
 少ない商圏人口で商売を成立させるためには、消費者の買物目的を増やし、1人当たりの支出額を増やす必要がある。化粧品も買えるし、肉も買えるという店でなければ、狭小商圏では成立しない。ラインロビングとは、狭小商圏で商売を成立させるための基本作戦なのである。
 今月号でインタビューを掲載したスギホールディングスの杉浦社長の話によれば、青果・精肉の導入店舗をものすごい勢いで増やしていることがわかる。スギ薬局はドラッグストアの中で調剤の売上構成比がもっとも高く、専門店に近い業態であるが、狭小商圏化の進行によって青果・精肉をラインロビングし、買物目的を増やす必要があったようだ。
 競争対策として「専門性の強化」という言葉を聞くが、専門性を強化すればするほど、商圏を広く設定しなければ成り立たないことを注意すべきである。
 つまり、狭小商圏時代は、「専門性」と「便利性」を両立させることが重要である。現在、郊外のドラッグストアでは、青果・精肉をラインロビングした店は普通になっているが、その傾向は今後も続くだろう。

調剤強化と接客強化による
地域の健康と美容の拠点へ

 「調剤強化」は、ドラッグストアのもっとも重要な経営課題である。ドラッグストア市場は約8兆円と大きく成長したが、大手14社のシェアが約76%と寡占化が一気に進んだ。一方で、調剤市場も約7.5兆円とほぼ同規模の巨大市場である。
 それにもかかわらず、

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