ドラッグストア化粧品売場 5つの改革ポイント

再販制度の時代につくられた
「制度化粧品」という仕組み

 化粧品業界の取材を始めて最初に疑問に思ったことは「制度化粧品」という言葉である。意味がよくわからなかったので化粧品業界に詳しい人に聞くと、カウンセリング(接客)販売を個店契約した化粧品専門店で販売する化粧品のことだという。制度化粧品=カウンセリング化粧品のことである。
 現在はチェーン化しているドラッグストア(DgS)でも、制度化粧品は基本的には個店契約である。
 一方、カウンセリングではなくてセルフで販売する化粧品のことを「一般化粧品(セルフ化粧品)」という。化粧品を販売形態で区分けする理由がよく分からないので、歴史を調べていくと、そもそも化粧品の「再販制度」の時期につくられた制度であることがわかった。
 再販制度は1953年(昭和28年)に施行された「定価販売」を維持するための法律である。その対象商品は、DgSの主力である「化粧品」「医薬品(市販薬)」が含まれていた。
 戦後の再販制度の施行については、資生堂などの大手化粧品メーカーの働きによるところが大きかった。再販制度の誕生前の戦後間もないころは、化粧品の乱売合戦(安売り)が激化し、経営が苦しくなって廃業する小売店が続出していた。さらに、安売りによって利益の減ったメーカーが、製造原価の安い化粧品の「粗悪品」を流通させて、皮膚がただれるなどの健康被害が発生して、大きな社会問題になった。安売り合戦では小売店もメーカーも、そして消費者も誰も得をしない。定価販売を守って、品質の良い商品を適正価格で販売することが、当時の再販制度の目的だった。
 そのために、カウンセリング販売することを条件に、化粧品の定価販売を守るために「制度化粧品」という仕組みを導入したのである。戦後の混乱期における再販制度の制定は、一定の正当性があったと筆者は考えている。
 しかし、1980年代の後半から1990年代に入ると再販制度の見直しの機運が高まっていった。そして1997年(平成9年)に化粧品と医薬品の再販制度が撤廃されて、化粧品と医薬品の安売りが加速した。
 「サンドラッグ」のようなディスカウント型DgSは、カウンセリング化粧品(制度化粧品)を、定価(メーカー希望価格)の20%引き、低価格競争の最盛期には定価の30%引きの安さで販売した。当時のDgSの店頭に行くと、「カウンセリング化粧品定価の〇割引」という大きなPOPが氾濫していた。
 その後、「ノープリントプライス制」の導入が進み、定価という概念がなくなり、「定価の〇割引」という売り方は徐々にできなくなった。
 最近のDgSは、制度化粧品の安売りよりも、自前でBA(ビューティアドバイザー)を育成し、制度化粧品のカウンセリング(接客)販売を強化する方向に大きく転換している。

カウンセリングとセルフの
融合が未来の化粧品売場

 今回の巻頭特集は、月刊MDでは初の挑戦になる「韓国コスメ」の総力特集である。そこで、改めてドラッグストア(DgS)の化粧品売場の改善提案を……続きは本誌をご覧ください