プッシュ型の商談から
プル型の取り組みへ
人口減少、高齢化時代の日本の小売・流通業の変化を整理すると、図表1のような項目になる。
図表1の「(1)大商圏低シェア→小商圏高シェア」に関しては、リアル店舗の狭小商圏化は今後も進行していく。たとえば、日本の人口をドラッグストア(DgS)の店舗数2万2,084店舗で割ると、DgS1店当りの商圏人口は約5,600人と、1店当りの商圏人口が1万人を大幅に割っている。大手DgSの出店意欲はいまだ旺盛なので、さらに狭小商圏化が進むことが予想される。
その結果、「(2) 短期特価特売で広域集客→EDLPで近隣のリピート客を集客」というふうに、集客の考え方も大きく変わる。この変化は、メーカー、卸売業、小売業の「商談」に関する考え方にも大きな影響を与える。
「(3)高値入率・押し込み商談→需要予測で返品・在庫削減」「(4)販促金をつけて押し込む→売れる量だけつくり、流通し、在庫する」という変化は、従来のようなリベートなどの条件が出た商品を店頭に押し込む「プッシュ型」の商談から、店頭の需要予測に基づいた「プル型」の取り組みに変化していくことを表している。
リベート至上主義は
顧客の離反を招く
余談であるが、リベートの出る商品や高値入率商品を優先的に売場に陳列する「リベート至上主義」は、必ず消費者の反発を招き、小売業の衰退につながる歴史的な事実であると警鐘を鳴らしておく。
私が20代の記者の頃、当時の小売業の王様だったダイエーのバイヤーが、「日野さん、小売業は店舗で利益が出なくてもいいんだよ」と言ったことを今でも鮮明に記憶している。
驚いたので、「店で利益が出なくてよ」と答えた。
今思うと、ダイエーが規模拡大に邁進した当初は「消費者主権」「顧客満足の最大化」が目的だったはずだが、いつのまにかリベートを日本一取れる企業になるための規模拡大に目的がすり替わっていったのだと思う。
結果として、ダイエーの売場にはリベートは取れるが消費者に魅力のない商品ばかりが並び始めて、深刻な消費者離れにつながったことを記憶している。
リベート商談はバイヤーの重要な職務のひとつであるが、顧客満足の最大化こそが小売業の商談やMDの目的であるという原点は忘れてはならないと思う。
単品商談から
カテゴリー商談へ
売上が右肩上がりに伸びる時代ではない今後は、店頭に商品を押し込んで売上追求することよりも、……続きは本誌をご覧ください