ウォルグリーン型DgSが
1990年代から大成長した理由
4月に「第24回NFI米国視察ツアー」に行ってきた。今回の米国視察で感じたもっとも大きな変化は、「ウォルグリーン型ドラッグストア」の衰退である。1990年代前半から大成長を遂げたウォルグリーンをお手本にして、日本型ドラッグストア(DgS)づくりに邁進したDgS関係者も多いはずである。
ところが最近のウォルグリーンは、2024年度第2四半期決算(12~2月)では営業赤字に転落し、既存店の売上高も、横ばいから1桁台前半の減少に下方修正した。さらに、2023年には不採算店舗を多数閉店し、総店舗数は減少に転じている。
まずはウォルグリーンが90年代前半から大成長した戦略を簡単にまとめてみよう。1980年代のDgSは、スーパーマーケット(SM)の隣に出店することが多かった。しかし、SMがDgS商品をラインロビングし、徐々に大型SMにシェアを奪われていた。
筆者が独立した1997年のアメリカ視察で、SMの隣にあったDgSの店長に話を聞いたところ、その店の顧客一人当たりの「買上点数」はわずか2点であると聞いて驚いたことを覚えている。買上点数が2点ということは、「買物カゴが必要のない店」という意味である。
SMなどの大型店にシェアを奪われていたウォルグリーンは、生き残るために、「便利性」と調剤の「専門性」の2つを武器にした新しいDgSの業態開発に挑戦した。
ウォルグリーン型DgSの特徴の第1は、大型SMの隣から外に出て、住宅地に一番近い立地に単独で出店する戦略に転換したことである。
事実、住宅地の一番近くに単独出店したウォルグリーンの店舗数は、1995年には全店舗数の31%に過ぎなかったが、2006年には全店5,461店の84%の店舗が単独出店に転換している。
ウォルグリーン型DgSの特徴の第2は、売場面積300坪程度の小型店(米国では)に標準化したことだ。日本のコンビニのように「近くて便利」、短時間で買物できる「小型店」を武器にすることで、大型店との差別化に成功したのである。
ウォルグリーン型DgSの特徴の第3は、調剤の専門性を徹底的に強化したことだ。1982年のウォルグリーンの「調剤」の売上構成比はわずか16%に過ぎなかったが、その後、2006年には調剤の売上構成比が64%と一気に高まった。
調剤枚1数を増やすために「ドライブスルーファーマシー」にも挑戦した。現在ではウォルグリーン型DgSの調剤の売上構成比は70%を超えている。調剤の専門性を強化することで、業態間競争を生き残ったことがわかる。
ウォルグリーン型DgSの
未来は明るくない
住宅地にもっとも近い便利な店だったので、全盛期のウォルグリーンの経営者は、「近くて便利な店なので………続きは本誌をご覧ください