リアル店舗の価値を高めて ECと差別化する4つのニーズ

巨大なのに変化を恐れない
ウォルマートの凄味

 4月に行った「アメリカ視察リポート」は6ページを参照してもらいたいが、ウォルグリーン型ドラッグストアの苦戦と、ウォルマートの躍進、一人勝ちという変化がもっとも印象に残った。
 とくに日本円換算で売上高73兆円の超巨大企業であるウォルマートが、ECとのリアルを融合したデジタルシフトに巨大な投資を行い、アマゾンなどのEC企業との差別化に成功していることに驚かされる。
 過去5年間は、ほとんど新店をつくらず、総投資額の約70%をデジタル投資に振り分けている(図表1)。とてつもなく勇気ある経営判断である。日米問わず大手小売業は、普通は過去の成功体験に縛られて、これほどの大きな変化は好まないものである。
 しかし、時代の変化に合わせて、大胆な挑戦を恐れない企業文化を持つことが、ウォルマートという企業の最大の凄味なのだと思う。
 過去の歴史から考ええると、これほどの大企業なのだから、もっと大企業化し、社長が裸の王様になり、誰も責任を取らない、誰も決断しない弱体化した組織になることの方が一般的である。変えてはならない「企業文化」と、変えるべき「チャレンジ精神」の両方を持ち続けていることが、ウォルマートという組織の強みなのだと思う。
 デジタルシフトの後は、2022年ごろから「店舗改装」に日本円換算で約1.5兆円も投資し、2024年からは新規出店も再開している。かつてのウォルマートのイメージとは大きく変わった改装店舗の写真は、6ページからのリポートを参照してもらいたい。

リアル小売業の価値を高める
4つのニーズ

 消費者がリアル小売業に求める4つのニーズを図表2に整理した。これからのリアル店舗で重要なことは、ひとつのニーズに偏った店は支持されないということである。
 たとえば、「値段が安いから遠方から行くような立地の不便な店でも支持される」「値段が安いから接客が悪くても支持される」「近くて便利だから値段が高くても支持される」ということはない。4つのニーズの次元を高める努力が、これからのリアル小売業には求められる。
 ウォルマートの改装店舗は、この4つのニーズにバランスよく対応しているので解説していこう。
 第1のニーズは………続きは本誌をご覧ください