市場が大きく、来店頻度と
買上率が高い食品の重要性
ドラッグストア(DgS)の店舗数の急増によって、1店舗当たりの商圏人口(日本の人口÷DgSの総店舗数)が6,000人台まで狭小商圏化が加速している(28ページ記事参照)。
狭小商圏で売上と客数を増やすためには、市場規模の大きい商品、限られた商圏に住む消費者の支出金額の大きい商品、頻繁に来店してくれる商品を強化することが重要である。
これらの3つの条件に該当する商品分野が「食品」である。商圏人口5,000~6,000人時代に突入するDgSにとって食品強化は必然であり、もっとも重視すべき戦略である。
小商圏業態が新しい商品分野を取り扱う「ラインロビング」の際の鉄則は、市場規模の大きな商品分野を優先することである。
1990年代前半に、小型の薬局・薬店を経営していた経営者が、DgSという新しい業態を目指してラインロビングしていた時代を思い出す。
DgS開発を志していた薬局経営者の最初のラインロビングのターゲットは、ホームセンター商品に代表される「ノンフーズ」の分野だった。いくつかのチャレンジを取材したが、長期的に見るとどれもあまりうまくいかなかった。
極端な事例を話すと、あるDgSはホームセンターの居ぬき物件(約400坪)の売場を埋めるために、ホームセンター商品をラインロビングした。その中には「ツルハシ」を替え刃まで含めて品揃えをしていて衝撃を受けたことを覚えている。
ツルハシの用途はコンクリートをほじくり返すことである。いくら田舎立地の店であっても、一家に1台ツルハシを常備していないし、頻繁にツルハシの替え刃を買いに来店するわけでもない。そもそもツルハシの市場規模は驚くくらい小さい。もちろん、そのラインロビングは成功しなかった。
日配品のラインロビングが
DgSを生活ストアに変えた
また、別の店では、「ジグソーパズル」をラインロビングしていて、雑誌記者だった私は思わず笑ってしまった。限られた商圏の中でジグソーパズルを楽しんでいる家庭は限りなくゼロに近い。
当然、市場規模は極めて小さく、来店頻度も低く、ジグソーパズルのラインロビングは成功しなかった。
DgSが、病気にならなければ行かなかった薬局から「生活ストア」に大きく変わったきっかけは、「日配品(牛乳、豆腐、納豆など)」のラインロビングだったと記憶している。
日配品は腐りやすいので頻繁に配達する商品の総称であると同時に、消費者にとっては頻繁に来店し購入する商品だった。
日配品のラインロビングによって、めったに来店しない薬局が、商圏内に住む消費者が頻繁に来店する「生活ストア」「デイリーストア」に劇的に変わったことを覚えている。
すでに日配品、加工食品、冷凍食品は、ほとんどのDgSが取り扱っているが、今後は「買上率」が極めて高い生鮮4品のラインロビングも重要な戦略課題になっている。
一方、DgSの食品強化で重要なことは、………続きは本誌をご覧ください