変え続けるべきもの 変えてはならないもの

挑戦を続けたからこそ
ウォルマートの成長は続く

 「不易流行」という言葉があるように、仕事も経営も、変え続けるものと、変えてはならないものの2つがある。変え続けるものとは、時代の変化(消費者の変化、法律・競争環境の変化など)に対応して、果敢にチャレンジ・変化し続ける革新性を持ち続けることである。
 たとえば世界最大の小売業である「ウォルマート」(企業年商約90兆円)は、時代の変化に対応して変わり続けているから、今も王者であり続けているのだと思う。
 1960年代に、アメリカの真ん中に位置するアーカンソー州ベントンビルというド田舎から商売をスタートしたウォルマートの創業の店は、低価格帯の非食品を主に取り扱う小型のバラエティストア「ベンフランクリン」のフランチャイズ店舗としてスタートした。
 その後、価格帯の高い非食品を取り扱い、衣料などもラインロビングし、非食品主体の総合業態である「ディスカウントストア(DS)」という業態に挑戦して、大成功を収めた。当時のDSのナンバーワン企業は、「Kマート」という会社だった。
 ウォルマートがKマートの売上を追い越そうとした時期か、追い越した時期なのかは記憶があいまいであるが、1980年代後半にウォルマートは突然「スーパーセンター」という新業態に挑戦した。
 スーパーセンターは、非食品業態のDSに食品スーパーマーケットを合体した究極のワンストップショッピングストアだった。しかし、当時の専門家の評価は、「非食品出身のウォルマートが、生鮮を含む食品を導入してうまくいくはずがない」という批判的なものだった。
 しかし、ウォルマートは、食品卸をM&Aするなど試行錯誤を繰り返しながら、食品MDのノウハウを地道に構築し、今では米国の食品市場の23.6%というダントツのシェア(2023年決算の数値)を占める全米最大の食品小売業に成長している。
 ちなみに全米最大の食品スーパーの「クローガー」の食品市場に占めるシェアは10%なので、ウォルマートのシェアの高さが際立つ。
 ウォルマートの成功は、時代の変化に対応して果敢にチャレンジしたことにあると考える。
 一方、DSという一世を風靡した業態の成功に甘んじたKマートは衰退し、今では米国でKマートの看板を見ることもなくなった。
 ウォルマートの歴史を振りかえってみると、企業が成功を継続するためには、変わり続けることが唯一無二の条件なのだと改めて痛感する。

オムニチャネルリテーラーに
変化するウォルマート

 さらに近年になっても、ウォルマートは「変化し続けること」を止めていない。2023年2月には、………続きは本誌をご覧ください