ロイヤルカスタマーの
経済的インパクトの大きさ
小売業にとって「ロイヤルカスタマー」とは、単に来店頻度が高い客のことではない。その店・そのブランドを積極的に選び続け、価格や利便性だけでなく「信頼」で購買を決めている顧客のことである。
競合店が近隣に何店あっても、あえてその店を選び続ける。この「選ばれ続ける理由」を持つ顧客こそがロイヤルカスタマーである。
ロイヤルカスタマーの経済的なインパクトは、これまで感覚的に語られることが多かった。しかしAmazonプライム会員のデータを見ると、その大きさが数値としてはっきり見えてくる。
「Amazonの売上高の何割をプライム会員が占めるか?」という金額ベースの内訳はAmazonから公表されていない。ただし、Amazon利用者の内訳は、プライム会員75%、非プライム会員25%なので、単純計算するとプライム会員の売上は86%のシェアと推定できる。
つまり購入者数では4人に3人だが、一人当たりの支出額が非会員の約2倍あるため(図表1)、金額ベースではさらに偏りが大きく、Amazonの米国売上の8割台半ば〜9割近くをプライム会員が生み出している。
Amazonに限らず、ロイヤルカスタマーの育成こそが、これからの小売業がもっとも力を注ぐべきテーマだと考える。

Amazonプライム会員が示す
圧倒的な購買力
Amazonプライムの会員基盤は、2026年時点で世界2億5,000万人を超える規模に成長した。2019年に1億5,000万人だった会員数は、この7年でおよそ1.7倍に拡大している(図表1の②)。
これは単一の会員制ロイヤルティプログラムとしては世界最大級であり、米国では買物客の75%が会員、あるいは会員経由でサービスを利用しているとみられる。もはやプライム会員であることが、米国の消費生活における「標準」になりつつあると言ってよい。
注目すべきは会員一人当たりの購買力である。プライム会員の年間平均支出は約1,400ドルで、非会員のおよそ2倍に達する(図表1の①)。
会員費を払ってでも継続利用したいと思わせる配送体験やレコメンド(推奨)の精度の高さが、そのまま購買金額の差となって表れている。
会員は「探す」というストレスから解放され、Amazonというプラットフォームにまず立ち寄ることが習慣化している。
毎年恒例の「プライムデー」でも、この傾向は顕著だ。2025年のプライムデーは売上高127億ドルという過去最高を記録したが、期間中の購入の75%をプライム会員が占めたと報告されている。
セール期間中に新規客を大量に集めるのではなく、既存のロイヤルカスタマーが集中的に買い支えている構造がここに表れている。新規顧客の獲得コストが年々高騰する中、既存のロイヤルカスタマーにいかに多く、いかに頻繁に買ってもらうかという発想への転換が、Amazonの成長を支えているといえよう。
プライム会員は
「利益」にも貢献する
ロイヤルカスタマーの価値は、売上の大きさだけでは語れない。………続きは本誌をご覧ください