日野ブログ

「売場レイアウト」は 変化させ続けるべき技術である

2014/04/18 23:04

マーチャンダイジングは製品を商品に変える理論

 今月号で特集した「売場レイアウト」と「CDT(カテゴリー・デシジョン・ツリー)=商品分類」は、マーチャンダイジングの体系の中でも非常に重要で、かつ関連した技術である。
 小売業は「買物代行業」である。メーカーがつくった製品(プロダクツ)を、「買う立場」「使う立場」に立って売り方を開発し、製品を商品(マーチャンダイズ)に変える技術の総称をMD(マーチャンダイジング)と呼ぶ(図表1)。
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 MD技術の中でも、使う立場、買う立場に立って商品を再編集する「商品分類」と「売場レイアウト」は小売・流通業が消費者のために提案できる、もっとも重要な付加価値である。
 商品分類と売場レイアウトによって、同時に使う商品や、同じ場所で使う商品の関連購買が促進され、新しい使い方や食べ方の提案が生まれ、新しいライフスタイルの発見もできる。
 MD理論では、商品群や商品の再編集によって売場レイアウトや商品分類を見直す技術のことを TPOS開発という(図表2)。
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 また、売場レイアウトや商品分類は、MD技術の中で、消費者や環境の変化に対応して、常にPDCAサイクルを繰り返し、成功事例をつくり、見直し、変化させ続けるべき技術の代表である。
 小売業は「変化対応業」であるが、もっとも変化対応すべき技術の代表が、売場レイアウトと商品分類(CDT)である。

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追随できない「強固なブランド」を10年かけて創造しよう

2014/03/17 23:46

マス広告が効かない!店頭MDの重要性増す

 テレビコマーシャル(マス広告)の効果が年々低下している。私の妻も、スキップ機能を使ってCMを瞬時に飛ばしながら、テレビ番組を視聴している。「早送り」ではないので、CMをまったく見ないで、ドラマや映画を楽しむことができる。
 かつてのように商品(ブランド)を育成する手段が、テレビCM一辺倒だった時代が終わり、店頭、インターネット、口コミ、イベントなどと、商品(ブランド)の育成チャネルが多様化している。
 DgS(ドラッグストア)は、テレビCMの出稿量の多い商品を仕入れて、それを安く販売することで成長してきた。医薬品という高粗利益率部門を持っていたので、テレビCM出稿量の多い売れ筋商品を安く売っても、店全体でマージンミックスをすることができた。
 しかし最近は、テレビCMの出稿量は少なくても、店頭で売れ筋として育成される商品(ブランド)が増えてきた。
 「こんな新商品が発売された」という認知メディアとしてのテレビの有効性はまだ高い。しかし、「この商品はこんな価値があるのか。こんな使い方があるのか」という商品の価値を深く知る「理解メディア」として、店頭での情報発信の有効性は非常に高い。
 「店頭で育成される売れ筋」が増えた結果、小売業では「専売品」、SB(ストアブランド)、PB(プライベートブランド)のような「オリジナル商品」の売上が増えている。
 DgSの売上全体に占めるSB、PBの売上構成比は、5年前は5%程度だったが、最近は10%を超えるDgS企業も登場している(図表1)。
 アメリカのDgSのSB、PBの売上構成比も、2013年期で15.9%と年々増えており、小売業のSB、PB比率の増加は世界的なトレンドである(図表2)。
 SB、PB比率が今後も高まっていくことは間違いない。おそらく10年以内にDgSのオリジナル商品の売上構成比は20%を超えると予測できる。

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小売業としてブランディングに挑戦

 小売業のSB、PB比率が高まるもうひとつの理由は…

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在庫管理力の高度化が筋肉質の経営体質をつくる

2014/02/18 10:54

隠れ不良資産が競争力を低下させる

 2月末、3月末決算が近づくと、春の風物詩のように繰り返される小売業の決算対策。値入率の高い商品の仕入額(在庫資産)を増やし、売価還元法による在庫評価で粗利益率を高く調整し、損益計算上の営業利益を増やす対処療法的な決算対策である。
 もちろん法律違反ではないし、見かけ上の営業利益は増えるが、在庫資産が増加し、キャッシュフローが悪化するという副作用が出る。
 決算期が終われば、値入率の高い商品を返品すればいいと考えている小売企業の経営者は論外であるが、筋肉質の経営体質を構築するためには、キャッシュフローの管理、つまり在庫管理力の高度化は不可欠の対策だ。
 理由は、損益計算書だけの評価では、「隠れ不良資産」の存在が隠れてしまうからである。たとえば、全世界に支社や合弁会社を持つ多国籍企業が、オーディット(会計監査)を行う場合、最も重視する項目は損益計算書ではなくて、キャッシュフローだ。
 性悪説に基づく欧米系の多国籍企業は、異国の支社の経営者は、不良在庫資産を増やすことで損益計算書を改善し、利益が出たように見せかけるはずだと常に疑っている。だから、監査では在庫資産の評価を徹底的に行うのである。
 私事で恐縮であるが、当社も出版物という在庫資産を保有している。当社が営業利益を出すのは簡単だ。値入率の高い商品である月刊マーチャンダイジング(MD)を大量に印刷して、在庫資産を廃棄しないで保有すれば、すぐに利益を出せるからだ。
 経営が悪化した出版社が毎月、多くの単行本を発刊し、「単行本を何冊つくれ」とノルマまで課すのは、新刊本という在庫資産を増やして、損益計算書を良くみせかけるためである。
 しかし、メーカーのつくった商品ならまだ再販売もできるが、たとえば、3年前の月刊MD3月号を購入しようと思う読者はほぼゼロである。古くなった出版物は完全な不良資産だ。つまり、出版社の経営破たんが「黒字倒産」であることがほとんどなのは、在庫評価のマジックなのである。
 当社は、ぎりぎりの部数しか月刊MDを印刷しない。ほとんどが年間購読なので、計画生産がやりやすい。書店ルートに配本するようなビジネスモデルを選ばなくて本当に良かったと思う。もし、特別注文があって欠品したら、「売り切れ」で終わりにして、増刷はしない。「売り切れしないように、ぜひ年間購読をお勧めします」と言うことにしている。
 また、1年前の在庫は強制的にゼロにし、廃棄した在庫は、毎月損金として落とす方法を採用している。
 このように、在庫評価をシビアに行うことで、キャッシュフローが改善し、企業の経営体質はより筋肉質になる。小売業だろうが、メーカーだろうが、出版社だろうが、マネジメントの本質は同じである。


商品部は粗利益高と在庫日数を管理する

 最近の小売業の最大の経営課題は「粗利対策」である。もっとも手っ取り早い粗利対策が「高値入率の高単価商品」の仕入れを増やすことである。しかし、30年近くに及ぶ流通ジャーナリストの経験から断言するが、「高値入率主義」に陥った小売業は、必ず衰退の道をたどる。
 理由の第1は、…
 
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「男性客」を増やすことは「狭小商圏」対策の柱である!

2014/01/23 19:32

狭小商圏対策 〈1〉 来店頻度を増やす

 小売業全体の「売上成長率」よりも、「売場面積増加率」の方が高いオーバーストア時代に突入して久しい。その結果、日本の小売業の1店舗当たりの商圏距離は狭くなり、商圏人口も減少している。「狭小商圏時代」の到来である。
 今月号で紹介した「イオンモール幕張新都心」のように、話題性、エンターテインメント性を徹底的に強化することで、唯一無二の来店動機を創り、より広域商圏からの集客を図ることも、オーバーストア対策である。
 しかし、ほとんどの小売業は、そんな投資はできず、1店舗当りの商圏距離と商圏人口が減少している状況だ。
 この狭小商圏時代に、売上と客数を増やすための基本対策は、以下の3点である。
 第1の対策は、顧客の「来店頻度」を高めることだ。
 例えば、オーバーストアによって商圏人口3万人が、半分の1万5,000人に減少したとする。極端な話、来店客の月間の平均来店頻度が1回のまま変化しなければ、客数は半分に減少してしまう。しかし、来店頻度が月2回になれば、商圏人口は半分になっても、客数を維持することができる。来店頻度の向上作戦は、最も重要な狭小商圏対策である。
 来店頻度を増やす基本対策は、ラインロビング(品種の種類を増やす)を行うことで、買物目的を増やすことである。結果として、狭小商圏業態は「バラエティストア化」していく。
 さらに、来店頻度を増やすカテゴリー(食品、日配、オーラルケア…etc.)や、サービス(写真プリント、おいしい水の給水サービス…etc.)を強化することも重要である。
 かつては、豆腐、牛乳、納豆などの日配品を取り扱うDgS(ドラッグストア)に対して、「美と健康の専門店であるDgSなのに、豆腐や牛乳を取り扱うのは変だ」と揶揄(やゆ)する意見も多かった。
 しかし、日配品のラインロビングは、狭小商圏化しても客数を増やすための基本対策である。「日配品」という総称は、日持ちがしないので毎日のように配達する商品という意味だ。顧客からしても、日持ちがしないので買い置きができず、週に何回も購入する商品である。つまり、日配品は、来店頻度を増やしてくれる典型的なカテゴリーなのだ。
 また、来店頻度を増やす「キーアイテム」として、最近は、「バナナ」「もやし」を、強化するDgSが増えている。狭小商圏化に対応するためにバラエティ化することは、DgSとして邪道ではなくて王道である。
 差別化するためという理由で、医薬品や化粧品の専門性を強化するだけでは、狭小商圏化には対応できない。むしろ、専門性強化という戦略は、広域商圏化しなければ業態としては成立しない。
 逆説的にいえば、来店頻度を増やし、客数を増やすことによって、結果として、医薬品や化粧品のような専門性の高いカテゴリーの売上も増えるのだ。
 2013年の『ドラッグストア白書』(2013年10月号参照)によれば、株式を上場しているDgS企業の中で、「医薬品」の売上を前年比で2桁伸ばした企業は、クスリのアオキ(前年比16.6%増)とコスモス薬品(前年比15.9%増)の2社だけである(その他の13社はすべて一桁の売上成長率)。
 同様に「化粧品」の売上を前年比で2桁伸ばした企業も、クスリのアオキ(前年比15.1%増)とコスモス薬品(前年比13.2%増)の2社だけである。
 両社に共通することは、積極的に食品強化とラインロビングを行い、来店頻度を高めることで客数を増やし、既存店の売上高を大きく増やしたことである。
 つまり、来店頻度の向上作戦は、DgSの「核売場」である医薬品と化粧品の売上増加作戦でもある。

狭小商圏対策 〈2〉

狭小商圏対策 〈3〉

狭小商圏対策〈2〉〈3〉は本誌をご覧ください


ブランディングこそがリアル店舗の存在価値をつくる!

2013/12/19 17:56

単なる販売チャネルでは リアル店舗は生き残れない

 ネット販売が急成長している。アメリカでも、ウォルマートの売上が前年比1桁成長なのに対して、アマゾンは前年比40.6%も売上を伸ばしている。
 ネット販売の最大の特徴である「ロングテール」というビジネスモデルは、(1)品目数が多く、(2)スペック(仕様)が明確な商材(ナショナルブランド[NB]主体)で、(3)広域商圏型というもので、同モデルのリアル店舗を駆逐しようとしている。
 最初に淘汰されたのが「書店」だ。続いて「家電量販店」がネット販売に大きくシェアを奪われた。日本においても、ヤマダ電機が2013年9月中間連結決算で営業損益23億円の赤字に転落した。
 「ショールーミング」(店頭で商品をチェックして、その場でスマートフォンを使って最も安いサイトに注文する)に対抗するためには、ネット販売よりも低価格を追求しなければならない。
 しかし、店舗を構えて、在庫を抱え、人件費がかかるリアル店舗のコスト構造では、長期的に価格面でネット販売に勝ち続けることは困難である。
 ネット販売に淘汰される売り方の第2は、「ハイ&ロー」である。売価を下げて広域から集客するハイ&ロー業態は、ネット販売には勝てない。いくら広域商圏といっても、リアル店舗の「来店可能商圏人口(距離)」には限界があるが、ネット販売の商圏は全国、全世界である。
 「薄利多売」では、リアル店舗はネット販売には勝てない。多少安いからといって、車で1時間近くもかけて来店するくらいであれば、ネットで注文して翌日配達の方が便利である。
 つまり、ネット販売の発達によって、「ハイ&ロー」が衰退し、「EDLP(エブリデーロープライス)」が主流になる。
 リアル店舗がネット販売に対して優位に立てるニーズは、「コンビニエンスニーズ(近くて便利)」と「エンターテインメントニーズ(楽しい)」である(図表1)。コンビニエンスニーズを追求するリアル店舗は、狭小商圏化が進み、必然的にEDLP化が進む。
図表1 消費者が小売業に求める4つのニーズ
 ライブ感のあるエンターテインメントニーズは、リアル店舗だけが提供できる付加価値でる。最近、休日にイオンモールで一日過ごす家族連れを「イオニスト」という造語で表現するそうだ。イオンモールは、有名タレントを呼んだり、季節ごとに年間計画でイベントを企画することで、エンターテインメント性を演出し、集客しているわけだ。ライブで味わえる「楽しさ」は、リアル店舗だけが提供できる価値である。

オリジナル商品を強化し 店のブランドをつくる

 ネット販売に対して差別化するための最大の経営戦略は、…
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食の「非日常」に近づくSM  食の「日常」に近づくDgS

2013/11/21 15:46

構造的な不振が続く食品スーパーマーケット

 SM(スーパーマーケット)の苦戦が何年も続いている(図表1)。「日銭商品」なので、最も倒産しにくい業態といわれたSMであるが、経営破たんする地方SMが増加している。なぜなのだろうか?
 僕が独立前に在籍していた流通専門誌では、食品担当の編集記者が主流だった。HC(ホームセンター)やDgS(ドラッグストア)のような非食品業態の担当記者だった僕は、社内では傍流だった。
 そりゃあそうだ。食品市場は圧倒的に大きく、当時、DgSが提唱していたHBC(ヘルス&ビューティー)など、ちっぽけな市場でしかなかった。
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 SMの不振は、構造的な問題が原因である。構造的な原因の第1は、SMが消費者の購買行動の変化に対応できなかったことである。
 先日、生鮮(アウトパック)を含む食品売り場を拡大して絶好調のDgSを視察した。そのDgSの隣には地元のSMが隣接していたが、冷凍食品売場を壁面で展開しているDgSの食品売場の方がに賑わっており、隣のSMは閑古鳥が鳴いていた。
 そのSMの売場を一周して分かったことは、もはや生鮮4品を核としたSMの食品売場は、専業主婦が大半の時代のような「食品の日常的な買物の場」ではなくなってしまったという確信である。
 生鮮4品を壁面で配置するSMの売場レイアウトは、専業主婦が家族4〜5人の夕食の材料を購入するのに便利なレイアウトである。しかし、働く女性の増加、老夫婦世帯の増加などの核家族化によって、食品80兆円市場の中で、もっとも衰退している市場が、SMがメインとしている「夕食の材料としての生鮮市場」である。
 さらに、専業主婦が夕食の献立の材料を購入するという市場は、日常的な市場から、非日常的な市場へと変化している。今回視察した地方都市のSMの顧客の多くは、共働き、もしくは老夫婦二人の世帯である。例えば、息子は東京の大学に行き、娘は結婚して大阪に住んでいる。老夫婦二人で夕食の材料を買って調理しても食べきれず、かえって高くつく。
 日常的な食事は、コンビニ(CVS) の調理済みの食品や、DgSの冷凍食品、焼きそばをつくれる材料(もやし、豚こま肉)を売っているDgSの「アウトパックの生鮮」で十分である。
 お盆やお正月に久しぶりに息子と娘が帰ってくる。久しぶりに家族が全員そろう。お母さんは久しぶりに家族の夕食の材料を購入するために、鮮度の良い生鮮食品を取り扱うSMに買物に行く。
 「家族団らんの夕食」という光景は、もはや「日常」よりも「非日常」に近くなっている。
 少し乱暴な論理展開ではあるが、生鮮4品を核としたSMの食品売場は、消費者の購買行動の変化によって、どんどん「非日常的な買物の場」に変化している。
 SM業界が、「生鮮の鮮度強化で差別化する」と声高に叫べば叫ぶほど、「日常」から「非日常」の市場にシフトする結果になっている。

売っても儲からないSMの生鮮売場

 つまり、壁面で冷凍食品を展開しているDgSや、調理済み食品主体のコンビニの食品売場の方が、食の新しい購買行動からすると、「日常的な買物の場」であると感じる消費者が増えている。
 DgSの食品強化は、食品の安売りによる「集客手段」というよりも、消費者の購買行動の変化が生み出した「必然」である。
 しかし、…
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店の「バラツキ」をなくすことが 顧客満足の向上につながる

2013/10/19 23:00

 チェーンストア経営とは、同じ看板の店を多店舗展開するシステムである。多店舗展開する小売企業が、最も重視すべき経営戦略のひとつが、人や店による「バラツキ」をなくし、どの店に行っても、一定の範囲で「均質化」された良質なサービスを受けられる状態を維持することである。つまり「標準化」を進めなければならない(図表1参照)。
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 たとえば、同じ看板のA店に行くと、欠品も少なく、クリンリネスが徹底され、レジ対応も親切だったが、同じ看板のB店に行くと、欠品だらけで、売り場も汚く、レジ対応は無愛想だったとする。
 こうした店によるバラツキは、その店の「看板」(ブランド)を信用して来店した顧客に対する裏切り行為である。
 つまり、人や店によるバラツキを極力少なくする「標準化」というプロセスは、チェーンストアとしての最大の「顧客満足対策」である。
 標準化することで、結果としてローコストオペレーションを実現することもできるが、標準化の目的は、コスト削減ではなくて、顧客満足の最大化であるという原理原則を忘れてはならない。
 今月号の巻頭特集は『第2回顧客満足度調査』である(28ページ参照)。この調査は、有力DgS企業30社を、本誌の独断と偏見で選び、1企業あたり2店舗をミステリーショッパー(覆面調査員)が訪問。清掃状況、基本接客(レジ対応など)、売場管理の状態などを採点し、その結果を集計したものだ。
 本調査は、企業にランキングをつけることが目的ではない。1企業2店舗と絶対的な「n数」が少ないので、統計的な価値はあまり高くないだろう。
 たまたまミステリーショッパーが訪問した店舗のレジ対応が悪いと、採点は一気に悪くなるし、逆にたまたま良ければ採点は一気に良くなる。
 つまり、ランキングをつけることが目的なのではなくて、ショッパー(買物客)が店のどういう項目を重視しているかを体系化し、店舗間のバラツキを少なくするチェックリストとして活用してもらいたいというのが最大の目的なのだ。
 そして、同一チェーンの「店舗間のバラツキが実はとても大きい」という実態を、読者に理解してもらいたいということが、2番目の目的である。
 店舗間のバラツキが大きいということは、ダメな店によってそのチェーン全体の顧客満足度が低下し、顧客離れや売上の低下が必ず引き起こされているということだ。
 つまり、ダメな店の平均点を底上げし、店舗間のバラツキを少なくすることで、顧客満足度が高まり、結果としてチェーン全体の売上を増やすことができる。
 標準化は、時図は最も効果的な「売上対策」でもある。

意識は行動を変えない 行動が意識を変える

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狭小商圏時代の小売店舗はバラエティストア化する

2013/09/19 8:49

 現在、2つの理由によって、リアル店舗のバラエティストア化が進んでいる。
 第1の理由は、オーバーストア化とインターネット販売の発達によって、リアル店舗の「狭小商圏化」が加速し、1店舗当たりの商圏人口と商圏距離がどんどん減少しているためである。コンビニエンスストアの商標距離は、以前は半径500m程度と言われていたが、最近は半径350mまで縮小している。
 また、ネット通販が発達することによって、1年に1個しか売れない死に筋商品も在庫できる「ロングテール」というビジネスモデルも成立している。その結果、リアル店舗がネット販売と差別化するためには、「近い」、「便利」、「ワンストップショッピングができる」という「コンビニエンス性(便利性)」を強化しなければならない。つまり、ネット販売と差別化するために、「近くて便利」を追求するリアル店舗の狭小商圏化が加速しているのだ。
 狭小商圏化が進んだリアル店舗が、限られた商圏人口で売上と客数を増やすための対策の基本は、「1人当りの支出金額」を増やすことである。
 そのためには、1店舗における1人当り消費者の「買物目的」を増やす必要がある。つまり、商品群(カテゴリー)もしくは品種(ライン)の種類を増やし、ラインロビングに挑戦し、バラエティストア化を進める。その結果、1店舗でいろいろな商品を関連購買(ワンストップショッピング)できる「便利な店」を目指すというストーリーになる(図表1参照)。
 第2の理由は、ドラッグストア(DgS)だけの独特なものだ(図表1参照)。医薬品のネット販売解禁、他業態の医薬品売場強化が進むと、DgSの医薬品部門の「売上構成比」と「粗利益率」が低下する。
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 その結果、医薬品で儲けて、他はロスリーダー的なマージンミックスが崩壊し、医薬品以外の高収益部門、高収益商品群の育成が急務になり、結果としてDgSは「バラエティストア化」する(本誌2013年8月号の「今月の視点」参照)。
 ここ数ヶ月の間に本誌が積極的に取り上げた「新業態」の実験は、方法論は多少異なっていても、基本的には狭小商圏時代という変化に対応した「ラインロビング」と「バラエティストア化」の実験である。

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売れても儲からない店 売れなくても儲かる店

2013/08/21 21:32

 小売業の経営構造は、図表1の4つの経営指標で説明できる。競争環境が激化すれば、小売業の重点数値は、「売上」から「利益」に変化していく。
 図表1のA店は、SPA(製造直売小売業)型の専門業態の経営構造である。坪効率(売場面積1坪当たり年間売上高)は90万円と低いが、PB(プライベートブランド)比率が高いために坪粗利が60万円と高くなる。坪粗利から坪経費を引き算した坪営業利益は12万円と高い。小売業の坪営業利益の目標は、年10万円突破なので、A店は、そんなに売れていないが、とても儲かっていることが分かる。
 一方、B店は坪効率350万円の繁盛店であるが、売場に経費が掛かりすぎていて、坪営業利益は2万円しか出ていない。「売れているから、必ず儲かっている」とは限らないのである。

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 チェーンストア経営において、売上高を増やす、粗利益高を増やすこと以上に、「経費」をコントロールし、「低売上でも儲かる業態」を確立することは、重要な経営戦略である。経費の低さは、競争に打ち勝つための基礎体力でもある。ローコストオペレーションを制するものが競争を制するといっても過言ではない。
 それでは、ローコストオペレーションを実現するための5つの経営対策を、以下に整理してみよう。

ローコスト対策(1) 高密度ドミナント出店

 ローコストオペレーション実現のための第1の経営対策は、高密度のドミナント出店である。チェーンストア経営は、商圏分割しながら、同一商勢圏に高密度で店舗網を展開することで、「地域シェア率」の最大化を図るビジネスモデルである。1店舗当たりの売上高の高さよりも、商勢圏内の店舗網の地域シェア率を重視する。
 「ランチェスターの法則」によれば、同一商勢圏内で圧倒的な地域一番シェア率を獲得した小売企業は、すべてのコストが低下し、営業利益高が大きく増加すると言われている。 
 例えば、高密度で店舗展開することで、物流センターを中核としたオペレーションが実現でき、物流コストが大きく低下する。また、「検品作業」や「カテゴリー納品仕分作業」(通路の両側に陳列する商品を同一オリコンに入れる)を物流センターで行うことで、店舗の店内作業コストは大きく下がる。
 さらに、商勢圏内で高い地域シェア率を獲得することで、メーカーからの仕入れ条件が有利になり、仕入れコストの低下につながる。
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月刊マーチャンダイジング 2013.9月号


マージンミックスは業態の設計図である!

2013/07/22 21:28

医薬品のネット販売解禁で粗利ミックスが変わる

医薬品のインターネット販売が事実上解禁された。「医薬品の対面販売の義務化。第1、第2、第3類分類制度。登録販売者制度」とはいったいなんだったのだろうか? 既得権益で甘い汁を吸いたい一部の「ロビー活動家」の策略が頓挫しただけのことである。
小売業は「変化対応業」である。医薬品のネット販売解禁が決定した以上、実業にたずさわるDgS(ドラッグストア)関係者は、医薬品の既得権益にしがみつくのではなくて、地域消費者にとって「便利で必要とされる店づくり」に果敢に挑戦すべきだ。
医薬品のネット販売解禁によって想定される最も大きな変化は、有名メーカーの医薬品の価格競争が激化し、医薬品部門の粗利益率が低下する可能性が高いことである。また、医薬品の売上の一部が、ネットやコンビニに奪われることである。
医薬品の粗利益率が低下し、売上構成比が低下すると、従来型のDgSの業態としての設計図である「マージン(粗利)ミックス」の構造が崩れる。
つまり、「医薬品部門の高粗利益率で儲けて、その他の部門はロスリーダー」(ちょっと大げさな表現だが…)という、これまでのDgS業態のビジネスモデルが成り立たなくなる。
したがって、「医薬品ネット販売解禁後」のDgSの最重点経営対策は、医薬品以外の収益部門、収益カテゴリー(商品群)を育成し、マージンミックスの設計図を大きく変化させることである。

中回転・高粗利益率の核売場を育成しよう

マージンミックスとは、「相乗積管理(売上構成比×粗利益率=相乗積)」のことである。図表1のように、「部門の相乗積の合計値」が店全体の粗利益率になる。ネット販売との競争が激化し、医薬品部門の「売上構成比と粗利益率」が低下すると仮定したシミュレーションが図表1の下の相乗積である。
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医薬品部門よりも粗利益率の低い「日用雑貨部門」と「食品部門」の売上構成比が増えた結果、店全体の粗利益率は約2%も低下する。粗利益率の1%は、売上の5%に相当するので、粗利益率が2%も低下したということは、売上が10%低下したのと同等の経済的なインパクトである。
売上が1割低下しても、営業利益が赤字に転落しない既存店舗はそれほど多くはない。マージンミックスの構造が崩れることは、従来型の業態では経営的に成り立たなくなることを意味する。
したがって、「医薬品のネット販売解禁後」のDgSの最重点経営戦略は、医薬品と同等かそれ以上に粗利益率の高い部門や商品群を育成し、核売場化することでマージンミックスを行い、店全体の粗利益率を改善することである。誤解を恐れずにいうならば、DgSは「バラエティストア化」することで、新しいマージンミックスの設計図をつくる必要がある。
図表1でいえば、家庭雑貨(ゼネラルマーチャンダイズ)、衣料(ソフトグッズ)の売上構成比を高めれば、医薬品部門の粗利益率低下をカバーすることができる。(…続きは本誌をご覧ください

月刊マーチャンダイジング 2013.8月号


あなたの店は本当に「便利な店」なのか?

2013/06/20 10:26

立地は便利だが売場は便利ではない店

以前から、流通関係者の間でよく聞かれる話。「オーバーストア時代になって、近くて便利なだけの店では生き残れないよね。差別化戦略を考えなきゃ…」。果たして本当にそうなのだろうか?そもそもあなたの店は本当に便利な店なのだろうか?
便利性の高い店舗の第1の条件は、自宅から近くにあるという立地の便利性である。また、駐車場に入りやすい、出やすい店舗設備をつくることも便利性の追求である。小商圏フォーマット開発とは、便利性の追求作戦である。
そして、便利性の高い店舗の第2の条件は、「欲しい商品が探しやすく選びやすいので、短時間で買物ができ、必要な商品を関連購買でき、コーディネートできること」である。
つまり、よく聞かれる話の正しい表現は、「家から近いだけの便利な店では生き残れないよね。地域の消費者にとって本当に便利な売場を追求しないと競争に勝てないよね」である。
競争激化による差別化戦略というと、「接客」、「専門性」の強化を掲げる企業が多い。しかし、誤解を恐れずに言うならば、「接客」、「専門性」の強化よりも、「便利性」の追求こそが、最も優先順位が高く、重要な差別化戦略である。
消費者が小売業に求めるニーズは、図表1の4つのニーズである。その中で最も強いニースがコンビニエンスニーズ(便利性)である。「近くて便利」が、消費者が店舗に期待する最も強いニーズである以上、小売業としての最大の差別化戦略は、「便利性」を追求することである。

201307zuhyoしかも、インターネット販売の発達によって、年に数個しか売れない商品も在庫する「ロングテール」のビジネスモデルが成立している。デプスアソートメント(深い品揃え)による専門性(スペシャリティニーズ)追求に関して、リアル店舗はインターネットには絶対に勝てない。
また、全国もしくは世界を販売市場にできるインターネット販売は、単品大量販売が実現しやすく、価格競争力もリアル店舗より優位性が高いかもしれない。
そうすると、コンビニエンスニーズ(便利性)と、エンターテインメントニーズ(楽しい、人と人との触れ合い)の2つが、リアル店舗がインターネット販売と差別化するために、究めなければならない重点ニーズと言えるであろう。
自分達が思っているほど、あなたの店は便利ではない。先日も某ドラッグストア(DgS)の売場を視察した。通路幅が狭くて、ショッピングカートでは通路に入れない。無意味に品目数が多すぎて、何を買えばいいのか分からない。しかも、売れ筋の陳列量が少ないので、商品が探しにくく、売れ筋が欠品している。
「使う立場、買う立場」のTPOS分類になっていないので、欲しい商品がどの通路にあるのか分かりにくい、同時に使う商品の売場が遠く離れている。一方で、自分達が売りたい「値入率の高い高単価商品」がほとんどのエンドを占有し、売り込みPOPばかりが目立つ。立地は便利だが、売場は便利ではない店は多い。(…続きは本誌をご覧ください

月刊マーチャンダイジング 2013.7月号


「中分類」はMDの「戦略単位」である

2013/05/15 22:00

プロダクツ(製品)とマーチャンダイズ(商品)

本誌(月刊MD)では、「製品」 (Products)と「商品」(Merchandise)という言葉を明確に使い分けている。新製品という言葉は使わず、新商品と表現することにしている。
本誌の誌名であるマーチャンダイジング(MD)とは、メーカーがつくった製品の売り方を開発し、魂を入れて、「製品」を「商品」に変える活動である。
売り方の開発には、どう仕入れるかという調達方法、どう運ぶかという物流の革新のようなサプライチェーン改革も含まれる。「この製品をいくらの売価に値付けすれば、顧客満足と経済合理性を両立できるか」を決定するプライシング(値付け)技術も、重要なMD活動だ。
また、品目毎の陳列量と、陳列位置を決定する「商品構成」の設計図の作成。つくる立場、売る立場から、「使う立場、買う立場」に商品の並べ方を再編集する「商品分類」の設計図の作成。値入率の高い部門(商品)と低い部門(商品)を組み合わせて、店全体で適正利益を確保する「マージンミックス(相乗積管理)」の設計図を作成することも、MD技術の根幹である。
さらに、POPを使った店頭での価値訴求や、陳列演出も重要な「売り方」の開発である。私は、「製品」を「商品」に変えるMD活動は、製造業が製品をつくることと同じくらい重要な技術であると思う。
「いいものをつくれば必ず売れるはずだ」という技術を過信しすぎているメーカーも多いが、いくらいいものをつくっても、消費者にその商品の良さや使い方が伝わらなければ、商品は売れない。
モノ不足時代と違って、成熟消費市場に突入した日本では、いいものをつくること以上に、商品の「売り方」を開発するMDの重要性が高まっている。
日本はモノづくりの国ではあるが、モノをつくることと匹敵するくらい、売り方を開発することは重要な社会貢献である。小売・流通業で働く人達は、自分達のMD活動に、もっと「誇りと自信」を持つべきである。(…続きは本誌をご覧ください

月刊マーチャンダイジング 2013.6月号


「売り切る力」を高めて 高収益店舗をつくる!

2013/05/07 12:03

営業利益率8.2%「セリア」の高収益性

100円ショップ「セリア」の業績がよい(図表1参照)。直営チェーン方式で1,000店舗を突破し、ROA(総資産対経常利益率) 19.3%、営業利益率8.2%と驚異的な高収益企業である。

ROAは企業の収益力(儲け)のモノサシであり、ROAが10%を超えている企業は儲かっていると評価されるが、すべての商品の売価が105円でありながら、セリアはとても儲かっていることが分かる(ちなみにドラッグストアでもっともROAが高い企業はコスモス薬品で15.8%、2012年2月期)。
前月4月号で「日雑・家庭用品」の提案力という特集を掲載した。その中で、セリアの日雑・家庭用品の商品構成・商品分類を調査した。

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ネット対策は、SB、PB強化とリテールテインメントである

2013/05/07 11:55

他社とは比較できないオリジナル商品を育てよう

2月前半にニューヨークとラスベガスへ視察旅行にってきた。アメリカの流通業界を取り巻く最大の変化は、アマゾンに代表される「ネット通販」の急成長である。「ショールーミング」という言葉がブームになっており、ネット通販とどう差別化するかが、「リアル店舗」の最大の経営テーマになっている。
世界最大の小売企業である「ウォルマート社」は昨年、アマゾンに対抗してNB(ナショナルブランド)の値下げを断行した。また、アメリカの世帯の25%は銀行口座を持っておらず、クレジットカードやデビットカードを持てない顧客に対して、オンラインで購入した商品代金を48時間以内に店舗で決済するサービスも開始した。
さらに、顧客の利便性を高めるために、ウェブで注文した商品を利用客の希望する店舗でピックアップできる「サイト・ツー・ストア・プログラム」を強化している。すべてネット通販に対する対抗手段である。
今回のアメリカ視察で、「繁盛しているリアル店舗」の特徴は、以下の2点である。この2点が、ネット通販と差別化するためのリアル店舗の重点経営対策である。

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